鳥取の住宅地にある古書店の「邯鄲堂」
◆インターネット時代だからこそ
前述の定有堂書店からさらに10数分歩いた、もう店もなくなり、完全な住宅街になったあたりに「邯鄲堂(かんたんどう)」という古書店があります。冬の日の夕暮れ時に歩いていくと、すっかり暗くなった通りに、店の灯りが見え、少し現実離れした風景に思えたくらいです。店内に入ると、これまた不思議な空間で、周囲も頭上にも本棚が走り、四方を本に囲まれた感じになります。
四方を本に囲まれた古書店「邯鄲堂」(鳥取)
鳥取にある古書店「邯鄲堂」
京都の「町家古本はんのき」は、お店の人が「誰かに聞いてこられましたか? 迷ったでしょう」と言うほど、住宅街の路地の奥の民家に店があります。古い町家の扉を開けると、本棚に本がびっしり並んでいますが、畳敷きの部屋に靴を脱いで上がっているからでしょうか、知人の家で書棚を見ているような気分になります。
京都の路地裏にある「町家古本はんのき」
この古書店は、京都のネット古書店「古書ダンデライオン」、「古書思いの外」、「空き瓶Books」の共同経営です。マニアックな本も多いのは、3人の個性が集まっているせいでしょうか。
本の流通を大きく変えたのがインターネットですが、そのインターネットによって個性的な書店が今までは考えられなかったような場所で開業しています。それぞれの経営者が、情報をSNSなどで流し、それを顧客が読んだり、さらに友人、知人に紹介したりする。そして、それを見て、場所を調べ、訪ねることができるようになっています。
本がインターネットで売られるようになって、実店舗の本屋の経営が圧迫されてきたことも確かですが、一方で個人経営者であっても情報を発信したり、わかりにくい場所でも探してもらえるようになっていることも事実なのです。