4月になり、期待と不安が入り混じる新生活が始まった新社会人は多いはずだ。経営コンサルタントで『50代からの「稼ぐ力」』を上梓した大前研一氏は、「死ぬまで『稼ぐ力』をつけたければ、休日の時間の使い方を変え、発想力や創造力を開発しなければならない」という。では、どう変えればよいのか。新社会人へのはなむけに、そのヒントを大前氏が伝授する。
* * *
「稼ぐ力」の大前提は、新しいビジネスモデルを生み出す「発想力(イマジネーション)」や「創造力(クリエイティビティ)」である。そんな力は自分にはない、と思っている人が多いが、実は新しいビジネスモデルを生み出すことは決して難しくない。
たとえば、女性タレントや女優と浮名を流している前澤友作氏が創業したファッション通販サイト「ZOZOTOWN」などを運営するZOZOは、2018年3月期(2017年度)の売上高が約984億円、営業利益が約327億円に達し、時価総額は8000億円近い。しかし、その事業やシステムにユニークな仕掛けは何もない。アパレル会社やセレクトショップを寄せ集めた“ネット服屋”にすぎない。だが、そういうビジネスモデルはそれまで存在していなかった。そのアイデアをいち早く思いついたから、前澤氏は大金持ちになったのである。
では、新しいビジネスモデルを生み出す発想力や創造力は、どうすれば身につけることができるのか?
その方法は、事業を何か一つ選び、自分だったらそれにどんな付加価値をつけて金を稼ぐか、と考えて思考を膨らませる癖をつけることだ。半分は妄想でかまわない。なぜなら、ほとんどの起業家は妄想家だからである。アップルのスティーブ・ジョブズしかり、アマゾンのジェフ・ベゾスしかり、スペースXやテスラのイーロン・マスクしかりである。そういう癖をつけると、新聞記事やネットニュースや電車の中吊り広告など情報を何でも興味を持って見るようになり、そこから自分なりのアイデアが出てくるようになるのだ。
私の場合、毎日早朝にNHK BS1の「ワールドニュース」を視聴している。これは世界18の国と地域、23の放送局のニュースをダイレクトに伝える番組で、世界で起きていることをほぼリアルタイムで知ることができる。他のニュース番組は、よほど大きな出来事でない限り世界のことはほとんど報じないので、私にとっては極めて貴重な情報源になっている。そして、その場で必ず人や場所の固有名詞と数字をメモする。それが新しい事業をビジネスモデルを考える時、大きな刺激になるのだ。