若旦那と惚れ合っている常磐木に横恋慕し、先に身請けの手金を打った剣術使いの天城豪右衛門。これが邪魔だと平吉とお関は天城の道場に乗り込み、門弟たちは譽石で皆殺し、天城はお関が色仕掛けで唇を合わせ、舌を噛み切って殺す。すぐに事は露見し、お関の家の周りを十手を持った男たちが「御用!」と取り囲むと、お関は「地獄に逃げよう」と平吉に譽石を舐めさせ、その死を見届けて自らも譽石を口に……。
劇的な最期を遂げる二人。「この先も譽石は持ち主を変えながら人を殺し続け、最後に用いたのは岩倉具視とも言われている」とのエピローグで締めくくられた。
圓朝の原作とは異なる結末で余韻を残した脚本は実に見事。そしてそれを「殺しの龍玉」が完璧に表現した。聴き応えのある口演だった。
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。
※週刊ポスト2019年4月19日号