結局、公開するかしないかは映画会社が判断でき、社会的影響を考慮して不祥事俳優が出演している映画を上映しないこともあります。その場合でも、監督や出演者などには報酬が支払われ、彼らには経済的な損失は発生しません。
映画は思想や意見を表現する有力な方法です。それなのに不合理な非公開は表現の自由の観点から好ましくないですが、多くの映画は営利目的で、経営上の判断が優先されます。ただ、映画の興行収入の一部を著作者に分配する約定があれば、合理的根拠がない非公開は違約になる可能性があります。
また、監督などの著作者が映画の公開を望むときは、自らが映画製作者となり、著作権を取得するか、映画会社との間で監督業務の委託契約を締結する際に、公開を義務付ける特約を付加する必要があります。
【プロフィール】1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2019年5月3・10日号