しかもその個人総合で世界選手権6連覇など、長期にわたり王座に君臨している。こんな選手は世界でも例がありません。もちろん、オールラウンドに強い選手だけなら過去にもいました。ただ大体は次の五輪にはいなくなっています。理由は体操という競技の宿命──人間の体の限界に挑戦し、極限まで追い込むために選手生命が短いのです。彼がレジェンドと呼ばれる所以です。
とはいえ、そんな内村選手でも、来年に迫った東京五輪はかなり厳しい戦いになるでしょう。体操選手の多くは20代後半で引退します。内村選手は東京五輪の時には31歳。私は彼の選手としてのピークは2016年のリオ五輪だったと思っています。ただ五輪が東京開催になったので続けているのだと思います。
私もそうでしたが、若い頃から体を酷使しているから、どうしても“勤続疲労”が起きている。最近、内村選手に負傷が増えてきましたが、ある意味必然なんです。もちろん一流のアスリートですから、東京にベストコンディションを持ってくるよう調整するでしょうし、出場すればまだ十分世界でもトップレベルの実力はあります。どれだけうまく体をケアしながら、東京五輪にピークを持ってこられるか。おそらく次がラスト五輪となるはずです。日本が生んだレジェンドの活躍に期待したいですね。
●取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2019年5月3・10日号