「そのうちお前、殺されるぞ」
仲間にそう言われて、フィリピンで稼ぐのは止めたという。
「フィリピンはやりやすいんだ。金さえ払えば捕まらない。なぜって、フィリピンの警察官はみんな、俺たちと友達だからね。ワルばかりさ。あそこの警察は、あと100年はよくならない」
積水ハウスが騙された地面師事件で、主犯格とされ逮捕されたカミンスカス容疑者が逃げていたのもフィリピンだ。その時、話を聞いた暴力団幹部もフィリピンの警察組織は腐っていると鼻で笑っていた。
他国民より自国民を狙うというのは、詐欺に限ったことではない。
「窃盗でも強盗でも中国人は中国人、韓国人は韓国人を狙うことが多い。日本で逮捕された中国人強盗団も最初のうちは中国人の家を狙って強盗に入っていた」
警視庁組織犯罪対策課の元刑事が逮捕した外国人犯罪者にも、そういう傾向があったのだという。
「彼らも日本人の家を狙うにはリスクが高いらしい。日本人の家に押し入るのは勇気がいると言うんだ。泥棒に勇気もないがね(笑い)」
この強盗団は中国人の家や店に押し入って、被害者を縄で緊縛して銃や刃物で脅し、金品を奪いキャッシュカーを奪って暗証番号を聞き出しては現金を引き出すという緊縛強盗を繰り返していた。凶暴な犯罪者でも、日本人の家に強盗に入るにはリスクがあるという。
「だから彼らは集団で犯行に及ぶ。住宅事情や生活習慣など、様々なことが自分たちとは違うので、運転手、見張り役、実行犯と役割を分け、グループで犯行を行っていた。その方が安全で効率的なんだ」
今回逮捕された台湾の詐欺グループのように、窃盗団グループも台湾や香港、中国から日本に犯罪目的で出稼ぎ的に渡航してきている。これらのグループは、犯行後すぐに帰国するのが常套手段だ。盗めるだけ盗むと盗品は国際便で全部送り、すぐに日本を出国してしまう。そして数年後にまた戻ってくる。
「ひとつの手口を解明して捜査手法を確立すると、もう次の新しい手口が出てくる。せっかく被疑者に目星をつけても、次には違うメンバーが入ってくる。数十人が何回も、日本を出たり入ったりを繰り返しながら犯行を重ねていくんだよ」
自国に逃げられたら捜査が止まる。そのため被疑者が国内にいるうちに捕まえないといけない。捜査は思った以上に大変なのだ。
「厄介だが、現場付近の防犯カメラの映像などから、メンバー全員を割り出して逮捕するしかない」
日本にいても海外に出ても、警戒すべきは自国民とは。ますます世知辛い世の中になりつつある。