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27歳で生活保護を抜けた男性が今、直面する「絶望」

 ボーナスはもちろんなし。都内の風呂なしアパートは月に三万円もするし、交通費も全て自身で出す。食事も当然自分で買ったり作ったりですが、携帯代、光熱費を払うと手元には数千円も残りません。契約社員で一年毎の更新ですが、正社員になれる可能性はありません。そもそも、会社の景気が良くなく、私のような“傷モノ”を安く雇って会社を回しているような向きもあるのです」(水田さん)

 側から見れば、水田さんに甘えが見えるようにも映るだろうし、努力が足りない、自身に問題がある、などなど、彼にぶつけたいのは一言や二言では済まない。しかし、彼は普通の人が想像する以上の壮絶な環境で暮らさざるを得ず、そうした環境からやっと這い上がってきたばかりである。そんな彼が絶望し、また社会からこぼれ落ちそうになっている。

「働いたら負け、なんてネットでよく言われますけど、このままだと本当にそうだなと思いました。懸命に頑張っているつもりなんですが、生活が良くなるとは思えないし、いつまでも元犯罪者で、発達障害の話をすると“そういう人だ”と距離を置かれ、二度とまともな人とは見なしてくれない。働いていれば辛いことも多く、これなら生活保護をもらって施設で作業をやっていた方が楽なんです。施設で過ごしながら将来が見えないと嘆いていましたが、働いても将来が見えないなら、もう絶望するしかない」(水田さん)

 生活保護者向けの寮を運営する都内のNPO団体代表も、こうした元生活保護者の「回帰」について警鐘を鳴らす。

「特に若い生活保護者の社会復帰に向けた支援については、社会復帰までというより、復帰後の支援体制が薄いと感じます。復帰までは生活保護などの金銭的なバックアップ、食住の支援体制はある程度整っています。しかし、いざ復帰しましたという後の支援は全くないと言っていい。施設の職員などが個人的に相談に乗ったりすることはあっても、それ以上のことはできません。だから結局、会社や人間関係、慣れない社会生活に溶け込めず、生活保護に舞い戻る。そうして生活保護者の中には、生活保護費をだまし取るような悪質な自称支援者の口車に乗せられ、家畜のような生活を強いられる人も、ホームレスになる人もいる」(NPO団体代表)

 いつまでも支援に頼る人々を「甘えだ」「金の無駄遣い」と断罪することは簡単だ。しかし、彼らが支援に頼らなくて済むような制度を作ること以外に、この社会をよくしていく術がないのも事実だ。労働力不足の現在、皆が活躍できるという社会を作るためには、弱者を一方的に斬り捨てるのではなく、どんな人手も社会の一員として働いて生きることができる仕組みを成立させるのが、一番の近道だということも忘れてはならない。

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