そんな痛みに苦しみやすい女性たちにとって、「鎮痛剤」は男性よりも身近な存在で、長期的に服用している人も多い。中でも、専門家たちが「のみ続けるのは要注意」と声をそろえる鎮痛剤が「ロキソプロフェンナトリウム錠」だ。
「ロキソプロフェンナトリウム錠に代表される非ステロイド消炎鎮痛薬は、血流を抑えて熱をとり、患部の痛みを抑えるという仕組み。服用を続けると体温が下がり、慢性的な冷えを感じることにつながりやすい。さらに、2016年には腸閉塞という重篤な副作用があると厚生労働省が発表しています」(宇多川さん)
副作用は、ほかにもある。長尾クリニック院長の長尾和宏さんはこんな例を挙げる。
「むくみで悩む女性の患者さんに『何か薬をのんでいませんか』と聞くと、毎日ロキソプロフェンナトリウム錠をのんでいると返ってくることがあります。慢性的なむくみの原因が、まさか痛み止めにあるとは考えずのみ続けているケースです。もしのむならばアセトアミノフェンを主成分とした負担が少ない鎮痛剤にした方がいい」
◆便秘薬・胃腸薬
2人に1人の女性が悩む便秘は、慢性化しやすいため、薬を継続的にのむ人が多い。10代の頃から中高年になるまで、何十年とのみ続ける人も少なくないだろう。
「便秘薬は、腸に水分を集める『非刺激性』のものと、ビサコジルなどを主成分として腸の神経を直接刺激してぜん動運動を活性化させる『刺激性』のものに大別されます。いずれにせよ、どんな便秘薬も常用すれば効果が薄れるうえ、筋力などが低下して自力で便を出せなくなる危険があります」(新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さん)
便秘薬の“乱用”の末に起きる事態は深刻だ。東邦大学医療センター大橋病院婦人科所属の医師、高橋怜奈さんが明かす。
「特に刺激性のものは長期にわたって服用を続けると効果が得られなくなる『薬剤耐性』を引き起こし、ますます排便しにくくなる悪循環に陥ります。“もっと数をのまないといけない”と思って依存してしまい、毎回何十錠も服用しないと排便できなくなってしまった患者さんもいました」
同じ消化器系でいえば胃腸薬にも注意が必要だ。
「抗ヒスタミン剤が配合された『H2ブロッカー胃腸薬』は余分な胃酸の分泌を抑えてくれますが、それと同時に重要な神経伝達物質であるアセチルコリンという物質の分泌も抑えてしまう。アセチルコリンの活性が低くなると、認知症リスクが高まることがわかっています。特に体が小さく脂肪も多い女性は薬が効きやすいので注意してほしい」(宇多川さん)
「抗ヒスタミン剤」は市販の鼻炎薬などにも多く含まれる。
「それらの薬は眠くなったり、喉が渇いたりしますが、それは薬剤が脳の中枢にまで届いているからです。症状がつらい3、4日に限ってならばいいのですが、それ以上継続してのむのは避けた方がいい」(宇多川さん)
実際に、一部の「抗ヒスタミン剤」の市販薬の説明文書には、《長期連用しないでください》などと明示されている。気をつけたい。
※女性セブン2019年5月9・16日号