チケットレス化と同時に、球場自体の「キャッシュレス化」も推進している。ソフトバンクは福岡ヤフオク!ドームで決済手段にPayPayを導入し、楽天は楽天生命パーク宮城を「完全キャッシュレス化」した。現金決済に比べてスムーズに決済が進み、運営側としても現金出納の手間も減る。どこでなにが売れたか、というデータの集計も進むため、サービス改善にもプラスである。
最初はわかりにくいこと、スマホを使っていないことから、特に高齢層を中心に不満もあるようだ。この点はもちろん、留意せねばならない。だが、チケットレス化とキャッシュレス化は球場運営を円滑にする上で必須といえる要素であり、今後さらに広まることはあれ、ブレーキが踏まれることはないように思える。
◆転売対策で「チケットレス化」、東京オリンピックでも
チケットレス化が進むには「手間」以外の理由もある。それが「転売対策」だ。
スポーツイベントだけでなく、コンサートを含め、あらゆるイベントが「チケットの転売」という問題に頭を悩ませている。機械的な手段でチケットを買い付け、オークションサイトなどで高値転売する行為は、本当にイベントに行きたいファンにとって迷惑であるだけでなく、興行主にとっても、顧客との関係を破壊される、迷惑な行為だ。
従来、この種の転売行為は各都道府県の迷惑防止条例で「ダフ屋行為」として取り締まられてきたが、2019年6月からは「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(通称「チケット不正転売禁止法」)がスタートし、取り締まりの対象となる。
オンラインでのチケットとなれば、紙でチケットが発行されない=手渡しが難しくなるという理由から、転売対策には有効な対策となり得る。
だが、「どうしても予定が変わって行けなくなった」といった事情はあるもの。そこで、公式な「チケットのリセールサービス」が提供される場合が増えてきた。公式なサービスでの流通ならば、大規模な転売業者を排除することができる上、本当に欲しい人と困っている人をつなぐこともできる。こうしたサービスを使った「チケットの振替」も、オンライン・チケットであることが望ましい。
チケット争奪戦が予想される2020年の東京オリンピックでも、チケットの販売はオンラインが中心になる。公式のリセールサービスも用意され、「違法転売対策」はかなりの規模で取り組まれるようだ。前述の「チケット不正転売禁止法」も、東京オリンピック向けチケットの転売対策に使えることを目的に成立した、という面がある。
現状、東京オリンピックのチケットは紙でも発券されることになっているが、マイナンバーカードを使ったチケットレスサービスも検討されている。
こうした動きは、スポーツだけでなくコンサートでも広がっている。事実、セキュリティが重要な飛行機のチケットは、この10年で「eチケット」が当たり前になった。紙はすでに「印」に過ぎない。スポーツやコンサートでも、紙のチケットは残ったとしても、「原本はネットの向こうにあり、紙はたいした意味を持たない」というのが基本の時代は、すぐにやってくるだろう。