とにかく、大河ドラマファンの場合、テーマが多少気に入らなくても、主役の俳優が好きじゃなくても、各視聴者にとって意味のある理由を一つでも満たしてくれるのなら1年間毎回、忠実に最後まで観続ける。それが基本的態度だったのでは。

 しかし、今回はちょっと様子が違う。なぜなのでしょう。『いだてん』を、ドラマの3要素から観察してみると──。

【1】「時代」 お定まりの戦国~江戸時代ではなく、明治・大正・昭和という近現代。
【2】「主人公」 教科書に記載されるような有名人「ではない」。
【3】「物語」 主人公を中心に一本軸が通っているのが大河のスタイル。しかし今回は複数の主人公的デュアルな展開。

 と、ことごとく異例尽くしです。上記三つの要素を一つだけハズすならまだしも、全部を定石からハズしたことが視聴率の低下につながった、と言えないでしょうか?

 【1】の「時代」は、大河枠ではせいぜい明治維新あたりまでしか馴染まない傾向があり、【2】の主人公も、ストックホルム五輪へ日本人で初参加したマラソン選手・金栗四三(中村勘九郎)について、たとえ知ったとしても歴史を学び直す快感にはほど遠い。【3】の物語の作り方も、「マラソンと落語」が相互乗り入れし、二つの素材をドラマの中に入れ込んだため話がゴチャゴチャしてわかりにくい。

 脚本担当のクドカンが自分の好きな落語にこだわりすぎてオリンピック話が崩れた、といった批判もあります。がしかし、クドカン一人を戦犯にするのは早計でしょう。クドカンにはクドカンにしか書けないホンがあるから。

 落語愛にあふれたドラマ『タイガー&ドラゴン』(TBS系2005年)なんて実に素晴らしかったし、『あまちゃん』(2013年)ではアイドルをNHK朝ドラに取り込んでみせた。『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系2016年)ではゆとり世代の葛藤ぶりを空気までリアルに表現してみせました。まさしくドラマ史上の個性的傑作と言えるでしょう。

 今回の事態を一言で表せば、「大河ドラマという超保守枠とクドカンがあまりにフィットしなかった悲劇」かもしれません。

 大河ドラマのメイン視聴者はよい意味でも悪い意味でも「保守的」な傾向があり、もうダメと思ったら自分を変えてまでついてこようとはしない──という、もっともらしい説を今後いかに覆すことができるのか。

「やっぱりもう一度、見始めたの」と知人が報告してくる日は来るのでしょうか。いずれにせよ、大胆ないだてん構造改革は必須のようです。

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン