「プチブームを実感する」という三浦さん。確かに前述の高校生に続いて、友人の外国人を連れてきたという40代の兄妹も来店。そのあとにも男性1人がやってきていた。昆虫食は、かつては知る人ぞ知る珍味だったが、今は一般メディアでも取り上げられる頻度が増えた。食糧危機は現時点では想像しにくいため、食の好奇心、あるいは健康食として興味を持つ人が増えたということなのだろう。
昆虫はすでに世界人口の3割が日常的に食べており、とくにタイは盛んであるらしく、同店でも商品はすべて同国から輸入しているという。安全面では熱処理されていれば、病原菌や寄生虫の問題はないという。
「甲殻類に近い種なので、そうしたアレルギーを持っている人には、まずごく少量で試してみてと伝えています」(三浦さん)
昆虫食が注目されているのは、重量比で栄養価が高いこと。種類にもよるが昆虫の60~70パーセントがたんぱく質で、ビタミンや、カルシウム、鉄、マグネシウムなどのミネラルも豊富であることから、これまで炭水化物に偏りがちだった災害時などの避難食の代替としても注目されている。
あとは、「見た目の抵抗感」の壁を乗り越えられるかどうかだ。
「でも、考えてみれば、エビとかシャコ、サザエのキモの部分とか、よく見るとグロテスクなものはありますけど、みんな普通に食べているのだから慣れだと思います」(三浦さん)
今後は、国産昆虫の市場も拡大していくだろう。昆虫は繁殖力が旺盛で、エサも水も、場所も少なくて済むから、ビジネスとしても有望ではないだろうか。
ここまで読んで「自分で昆虫を獲って食べてみたい!」と思った人もいることだろう。三浦さんのおすすめはなんとセミ! 「素揚げにして塩で。セミの種類によって味が結構違いますね」とのこと。昆虫食の世界は奥が深そうだ。
●取材・文/岸川貴文(フリーライター)