感情労働をしていると、自尊心を傷つけられることが多い。例えば新人オペレータが配属初日にクレームを取ってしまい、1時間にわたって人格を否定されるような罵詈雑言を浴びせられることもよくあることだ。入社して数日で辞めてしまうオペレータは珍しくなく、適応障害になり、いきなり泣き出したり、腹痛で出社できなくなったり、さらにうつ病になって休職するオペレータも少なくない。オペレータの離職率は高く、採用から一年以内に半数が辞めてしまうコールセンターや、中には9割を超える所すらある。

 それほど辛い感情労働だが、世間一般では比較的誰でも就ける仕事と見なされ、社会的地位が低く認識されている。そのため、他業種へ移ろうにも、キャリアとして見なされない。つまり感情労働者は買い叩かれていると言っても過言ではない。

心をすり減らし、病気になって離職するオペレータは多い(漫画/榎本まみ)

◆職業経験として重用されない電話オペレータ

 オペレータは不人気職だが、未経験でも応募できること、応募できる年齢が幅広いことから、コールセンターでは様々な人々が働いている。

 ところがいざコールセンターのオペレータから転職して正社員になろうとすると、とたんに道は険しくなる。コールセンターでの職業経験は他業種では重用されず、専門的な能力を求められる正社員の求人ではじかれてしまうことが多いのだ。

 オペレータとして働く人たちの年齢層は、30~40代を中心に、20代や50代、最近では60代も増えている。時給が高いとはいえ、1日8時間、20日間働いても20万程度しか稼げず、貯金がないとこぼす人は多い。そのため、独身者も多いのだ。

 コールセンターには数年勤務しているオペレータも多く、中には10年、20年と勤続している人もいる。オペレータは精神的ストレスが過多で離職率の高い職種であるが、逆に(ストレス耐性をつけて)一度定着すると長い期間勤務してくれることが多い。長期で勤務しているオペレータには業務スキルが蓄積されるので、コールセンターにとって代え難い貴重な存在となっていく。

 けれど裏を返せば、コールセンターから抜け出すというハードルがそれだけ高いと言うこともできる。非正規雇用の中でも比較的高時給のためコールセンターに入るが、別業種の正社員へ返り咲くことは難しい。だから、延々とコールセンターで働いてしまうのだ。

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