◆感情労働に正当な評価を
私がコールセンターで働きながら4コマを描き始めたのは、オペレータが理不尽に怒鳴られることに対して憤りを感じたことがきっかけだった。今でもオペレータをはじめ、感情労働を担う人々に対する評価の低さにとても悔しさを感じる。
だからこそ言いたい。感情労働を担えるその技能は、とても貴重な技能だと。
それに、コールセンター業界は近年目まぐるしい変化を迎えていて先に話題に出たAIを導入する企業も多いが、それはオペレータが不足し人材が確保できていないことも大きな要因の一つだ。
コールセンターに電話しても繋がらないという経験をした人は多いと思うが、それは働いてくれる人材が急激に減っていることを表す。今はどこの会社でもオペレータを確保することに苦心している。
そのため、コールセンターではもはやオペレータの案内を有料化しているところもある。無料でサービスを受けたければWEB上で、もしくはAIで対応を受ける。オペレータと話をして案内を受けたければ別途課金が必要となるのだ。おそらく、将来的にコールセンターはこうして二極化していくと考えられている。
そう、いま電話口に出て細やかに案内をしてくれるオペレータや、「おもてなし」と言われるような好印象の接客をしてくれる従業員がこの先当たり前にいてくれるという保証は、もうないのだ。
そういう意味でも、心身をすり減らす仕事を請け負いながらも不遇な感情労働者の待遇の見直しをこれからは進めていくべきではないだろうか。
【榎本まみ】
新卒で入社した信販会社で支払延滞顧客への督促を行うコールセンターに配属。多重債務者や支払困難顧客から怒鳴られながらお金を回収する日々の中、心を病んで次々に辞めていく同僚を見て、オペレータの心を守る独自の回収メソッドを開発。300人のオペレータを指示し、年間2000億円の債権を回収する。「督促OLの回収4コマブログ」はアメブロの4コマランキング1位を獲得。著書に「督促OL修行日記」(文藝春秋)など。