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貧困とストレスのループから抜け出せないオペレータ職の現実

オペレータの職務経験は、なぜ評価が低いのか?(写真/アフロ)

 近年、日本における経済格差は大きく広がっており、極端に生活水準の低い非正規労働者は少なくない。たとえ低所得に陥っても収入を上げていければいいが、中には低所得のループに陥って抜け出せないことも…。職業として、「感情労働」(米国の社会学者により提唱された概念)に属するといわれるコールセンターのオペレータも実はそのひとつだ。

 オペレータは時給が高い上に、未経験者でも就きやすいが、オペレータから正社員になることも別業種の正社員への転身も難しく、非正規雇用から抜け出せない“負のループ”にはまりがちだという。オペレータの職業経験は、なぜ軽んじられるのか? コールセンター勤務の傍ら漫画を描いている榎本まみさんが、問題をリポートする。

 * * *
 コールセンターは、電話を受けるオペレータと、そのオペレータを取り仕切る管理職のSV(スーパーバイザー)と呼ばれるスタッフで構成されている。オペレータがお客様からかかってきた電話を受け、対処できないクレームなどの案件があればSVが引き継ぐ。SVは電話対応の他にも教育やシフト管理など、様々な役割を担っている。

 オペレータとSV。世間には数百人規模から、10人にも満たないオペレータで運営しているセンターまで様々なコールセンターがあるが、基本的にこの構造は共通している。そしてコールセンターで働くオペレータは、大半が派遣社員、契約社員、アルバイトといった非正規雇用のスタッフだ。SVは正社員もいるが、統計(※1)によると半数は非正規雇用のスタッフが占めている。つまり世のコールセンターは、ほとんどが非正規雇用のスタッフによって成り立っているのだ。

【※1/コールセンター白書2016年・2017年 スーパーバイザー/リーダー実態調査参照】

 オペレータの仕事はストレスフルだ。日々クレームを受け、怒鳴られ、一日中お客様と話をしている。正社員は後ろに控えてはいるが、お客様の対応をすることは稀。会社の窓口で矢面に立たされているのは、非正規雇用の人々なのだ。

◆労働として軽視される「感情労働」

 オペレータの仕事は「感情労働」と呼ばれている。感情労働とは、肉体労働、頭脳労働に続く「第三の労働」と言われており、感情を抑制する能力、具体的に言うと「相手に何を言われても反論せず従う」「嫌なことに耐える」能力が求められる。オペレータのほか、看護師、キャビンアテンダント、介護士、ホステスなどが例に上げられることが多いが、接客業のほとんどは感情労働の要素を持っている。

 そして看護師やキャビンアテンダントなどのように、感情労働の他に特殊技能が求められる仕事は例外として、現在、感情労働の多くが非正規雇用のスタッフによって担われている。そしてその職業の平均収入は他の職業に比べ低い(※2)。つまり感情労働は、ハッキリ言ってしまえば「稼げない」能力と見なされている。

【※2/毎月勤労統計調査平成30年分結果確報による月間給与額によると、飲食サービス業の給与額は全産業給与額平均の半分以下と最も低い】

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