国内

食事の「作り置き」でつながる 認知症家族の「中距離介護」

“作り置き”でつながる中距離介護エピソード(写真/アフロ)

 父の急死によって認知症の母(84才)を支える立場となった女性セブンのN記者(55才)が介護の日々を綴る。

 * * *
 母の姉であるKおばさんもやはり認知症だ。母より病歴は長いが、電子レンジの操作ができ、離れて暮らす娘のQちゃんの作り置きおかずで3食をとる。母の食事はすべて人任せの私としては、食が取り持つKおばさん母娘の関係が少しうらやましい。

◆「母の生活を支配しない」 従姉のポリシーに共感

 Kおばさんは母の4つ年上で御年88才。母より少し前に認知症と診断された。私の従姉にあたる娘のQちゃんは7才年上だ。

 私の父が他界する半年前にQちゃんの父親が亡くなったこともあり、葬儀から認知症介護まで、いつも少し前を行く頼れる先輩だ。事あるごとに相談するし、時々会っての愚痴や情報交換も楽しい。

 Qちゃんは仕事をしながら月3~4回実家に帰るいわゆる中距離介護。帰るたびに煮物などを作り置きし、冷蔵庫にストックしておくという。

 Kおばさんは昔から穏やかな人だったが、お年のせいか、最近はますますぼんやり気味。

「なんだかねー」が口癖だが、デイサービスでの入浴や食事も利用しながら、“ひとりご飯”もがんばっている。

「Kおばさんはすごいなー。母より年上なのに電子レンジを使いこなせるなんて」

 私は話を聞くたびにため息が出る。母は電子レンジが使えない。それどころか、居室にキッチンを備えたサ高住に転居した時、少しでも調理を続けるべきだと意固地になった私を尻目に、母は3食を食堂で食べることを選び、私をがっかりさせたのだ。

「姉妹でも違うもんだね。認知症の出方まで(笑い)。でも、母もこの間はレンジ加熱するおかずを容器ごとトースターでチンしてね、庫内が爆発現場みたいになってギョッとしたわ」とQちゃん。

 だが、Qちゃんはエライ。冷蔵庫に作り置きおかずがあるから、Kおばさんも食べようという気になるのだ。

「最近は“作り”じゃないこともあるよ(笑い)。自分で作るとどうしても量が多くなって無駄になるから、デパ地下で買ったり、宅配のチルドや冷凍おかずも利用したり。とにかく人間、何か食べなきゃ生きていけないもんね」

 私が母の介護で悩み、頻繁に相談した頃、心に刺さったQちゃんの言葉がある。

「Nちゃん、思い詰めないでね。私も母の世話に夢中になると、つい自分の思い通りに、母の生活を支配しそうになる。でもね、ボケても枯れても母の生活は母のものだから」

 当時、仕事をこなすように、母そっちのけで介護を思い詰めていた私は、Qちゃんの助言でフッと力が抜けたのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン