ネット上で人気者になるには、ビジュアルやキャラクターが必須。しかし、まずは知名度とSNSのフォロワー数を獲得したいところ。このふたつを手っ取り早く得るためには人気リアリティショーへ出演が近道だ。
そういった意味で『あいのり Asian Journey』に出演していた“でっぱりん”は、最近観たリアリティショーの出演者で最もタレント性がある人だった。視聴者に好印象を与えるタイプではないが、番組を観た人は彼女を忘れない。兎に角キャラが強い、番組への貢献度を考えれば、桃と同じくネットセレブになるチャンスを得た人ではあった。
“でっぱりん”は『あいのり』の旅を通して、各国で現地人がドン引くトラブルを起こし続けた。考えていることを言語化する能力が乏しいが、自分の気持ちは誰よりも知ってもらいたいタイプ。キレたら最後、旅はメンバーとスタッフを巻き込みカオスと化す。自己主張が苦手な女性メンバーには大声で恫喝し、総括を求める。その様子を注意した男性メンバーとスタッフをボコる。
“でっぱりん”は、長年続く『あいのり』のコンセプト“真実の愛を探す旅”を“暴力による支配の旅”へと変貌させた女帝だった。
「キレたら殴る人」を恋愛対象に置くことは難しい。しかし、”でっぱりん”は各国で男性メンバーから求愛を受けた。スタジオでは司会を務めるベッキーが「スタッフはみんな“でっぱりん”のことが好きなんだよ」「“でっぱりん”は人間力がある」と訴えていた。その意見に僕は同意出来なかったけど……。
『あいのり』のミューズだった“でっぱりん”がカップル成立した時点で『あいのり』シーズン2は終了(シーズン3もあると思う)。そして、日本に帰国した“でっぱりん”は満を持してYouTuberデビューを飾った。
“でっぱりん”のYouTubeチャンネル『きっきりんチャンネル』は、帰国した男性メンバー(現在は彼氏)とのネタ動画が投稿される。「ケンタッキー1万円分食べてみた」など、初期のYouTuberがやった企画を今頃やっている。つまり、現状ではフツー以下のチャンネル。『あいのり』で魅せた暴君さ、小学生のように地団駄を踏む激しさといった要素が一切ない。
普通の人はムカついても人を殴ることはできない。社会性があるからだ。しかし、“でっぱりん”にそんなことわりは通用しない。泣きながら吠えて殴る。僕がこれほど言及するのは、自分が失った野生を持つ“でっぱりん”への嫉妬だ。ゆえに、一視聴者として聞きたいことは「どの瞬間に殴ろうと思ったのか」といった『あいのり』の裏側。もしくは、番組では伝わらなかったモテた理由の自己分析である。カップルのイチャイチャ動画なんて肩すかし。
勝手な杞憂だが、このままでは“でっぱりん”は桃のようなネットセレブになれない。ひょっとすると、そういった身分を当人は望んでいない可能性もあるが……。
番組放送時、スタジオでは「“でっぱりん”の『あいのり』愛が強すぎる」と指摘されていた。ベッキーたちスタジオトークで言うところの『あいのり』愛とは、“真実の愛”へと突き進むことだろう。カップルが成立した今では、自分の恋愛をまっとうすることしか考えていないのかもしれない。
そんなことを考えた矢先、“でっぱりん”のツイッターを見れば自己紹介欄には「お仕事のご依頼はDMにて」と記載。やっぱり、彼女はイベントの出演オファーを待っている。上記したことは不正解だった。“でっぱりん”は間違いなくネットセレブの座を狙っている。
ならば、リアリティショーで定められたキャラクターを、ネットでは、より追求すべきだ。彼氏とイチャつく動画より、スカイプでアンチとケンカする動画に勝機があり。視聴者は何よりもキレる痛快な“でっぱりん”を求めている。