「おばあちゃん、確かに変だけど、私から見るとそれほど変わっていないんだよねー。おもしろいし、やさしいし」
母の暴言の矛先は私で、娘には、あの怪獣のようになった母が見えないのだと、その時は思った。でも今、落ち着いて考えると、当時母は四六時中激昂していたわけではない。
私が注視していたのは“おかしくなった母”ばかりで、むしろ娘の方が“夫を亡くし認知症に見舞われながら必死に生きる人”として、母ときちんと向き合ってくれていたのかもしれない。
「おばあちゃんが“Sちゃんかわいいから悪い男に気をつけてね”って言うから、“おばあちゃんもね”って返したら大爆笑! なんだか知らないけどお友達も大笑い。なんでもおもしろく考えるところ、さすがなんだよねー」と娘。
認知症になっても母がユーモアを失っていないことに気づき、私に教えてくれたのも娘だ。娘にしてみれば、認知症をなんとかしようなどという意図はなく、ただ“おもしろき祖母”を称えてのこと。
そこがきっと母にも心地よいのだろう。
※女性セブン2019年7月11日号