たとえば一口クラブ獲得賞金ナンバーワンのサンデーサラブレッドクラブには昨年282頭の馬が所属。骨折などで長期休養している馬もいるため、実際に出走したのは261頭で計1002回。単純に計算しても1頭あたり4回も走っていないことになる。152勝はダントツだが、実頭数は110頭で総頭数の4割ほど。強い馬は2勝も3勝もするが、年間1つも勝てない馬の方が多いのが現実だ。
馬の募集価格はさまざまだが、いい(と思える)馬を買おうと思えば、それ相応に高くなる。総額5000万円以上となると、勝ち上がってGⅢを1つ勝ったぐらいでは元が取れない。
一口馬主というシステムは「金融商品取引法」の規制下にある金融商品。元本の保証がないことはきっちり明記されている。大枚出資したものの、ケガや気性難のために一度もレースに出ることなく引退なんてことも、珍しいことではない。首尾よく勝ち星を重ねても、クラシックを目前にして骨折したり、屈腱炎で引退したりすることも覚悟していなければならない。出走するときは愛馬がらみの馬券も買うだろうが、複勝率でさえ4割に届かないので、赤字になることが多いし、競馬場へ行く交通費もバカにならない。ましてや一口馬主には個人馬主のような「ステイタス」もない。
そんなことで、冒頭のような質問を受けたときは「“儲けたい”と考えて出資しようとするのなら、やらないほうがいい」と答えている。
●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター
※週刊ポスト2019年7月12日号