「お尻や胸でもいいのですが(笑い)、私は傷とか白斑とか、性的でない部分にエロスを宿らせたかったし、2人が体を重ねる度に関係が深まっていく感じを、小説全体で表現したかった。
彼女たちの親との関係も大事に書きました。作中で親たちは2人の関係をそう簡単には認められない。でも、もし逢衣たちが周囲の期待に80%応えられていればあと20%も頑張ってみようと思えるかもしれないけれど、応えられる可能性が0%となったら、逆に吹っ切れられる場合もあると思うんです。
いくら世間の気に入るように生きてみても要求されるフツウの条件は増える一方ですし、時代によっても変化する言葉に自分の側から追いつこうと頑張りすぎる必要はないのかなあと、私自身、思います」
〈命は儚い〉〈なんで自分を、もしくは誰かを、むげに攻撃する必要があるだろうか。同じ時代を生きているだけでも奇跡のような巡り合わせの周りの人たちを〉との逢衣の呟きは自身の実感でもあるとか。だから出会ってしまった目の前の相手を、彼女たちはただ全力で愛するのだ。
【プロフィール】わたや・りさ/1984年京都生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。高校在学中の2001年、『インストール』で第38回文藝賞を史上最年少で受賞し、デビュー。2004年『蹴りたい背中』で第130回芥川賞(史上最年少の19歳)、2012年『かわいそうだね?』で第6回大江健三郎賞など受賞多数。著書は他に『夢を与える』『勝手にふるえてろ』『ウォーク・イン・クローゼット』『私をくいとめて』等。映像化作品も多数。2014年に結婚し、現在1児の母。東京在住。154cm、B型。
構成■橋本紀子 撮影■国府田利光
※週刊ポスト2019年7月19・26日号