これだけの情報しかないが、おそらく容疑者には、「妄想」があったのではないかと推測されている。精神医学で妄想は「訂正できない誤った考え」などと定義される。そこでここでは、渡邉和美・高村茂・桐生正幸編著『犯罪者プロファイリング入門―行動科学と情報分析からの多様なアプローチ』(北大路書房)にある、「妄想の周辺と犯罪者プロファイリング」を参考に、青葉容疑者についてみてみようと思う。
まず、妄想の定義の「訂正できない」の部分は、「自分が誤っているとはまるっきり思っていないため、訂正のしようがない」ことをいい、「誤った考え」の部分は「客観的にみて間違っていること」を指す。この本では、どのように誤っているかによって、妄想を「奇異な妄想」か「奇異ではない妄想か」で分けており、ここでの「奇異」は、「通常の文化の中ではありえないと考えられていること」と定義している。
奇異な妄想を持つ犯罪者のプロファイリングをみると、彼らの背景や生い立ちから鑑みても、私たちには理解できないことが多く、幻聴や活動性の低下、生活能力の低さが挙げられている。閉じこもりや清潔にできない、ゴミをため込むなどもあるらしい。実際、コンビニ強盗の後、警察の立会いで確認された部屋の中は、ハンマーで壁が壊され、ガラスが割られ、パソコンも破壊され、悪臭がするゴミ屋敷の様相だったようだ。
更にこの本のプロファイリングには、「現実を検討する能力は低く、犯行の手口、計画は稚拙で綿密さを欠き、隠蔽や逃走能力も低いため現行犯逮捕されやすい」ともある。容疑者は自身も全身に重いやけどを負い、現行犯逮捕されているし、犯行当日に寝ていたという近所の公園では、ガソリンの携行缶などが押収されている。犯行までの生活状況をみても、このプロファイリングに合っているように思う。
妄想の中でも頻度が高い被害妄想では、妄想が発展すると攻撃対象が人物から組織になり、精神的に追い詰められると攻撃がより凄惨なものになり、八つ当たり、無差別的な犯行の可能性が高くなるという。壁を何度も叩かれたという隣人は、犯行の数日前、容疑者に胸ぐらを掴まれ「殺すぞ。こっちは余裕ねぇんだ」と凄まれたと話している。
このような犯罪すべてが妄想によって引き起こされるものではないし、青葉容疑者に妄想があったのかも、まだ定かではない。ネット上では様々な憶測も飛んでいるが、なぜ、こんなことをしたのか、そこをしっかり解明し、法律できちんと裁いてほしいと願う。