「正直、連敗中は苦しかったですね。ただ、ノリ(則本)が戻ってくるまで、なんとか5割をキープできれば十分と考えてスタートしたシーズンだったので、目標はクリアしている。まあ、高い貯金を使い果たしましたけどね(笑い)」
平石は則本を「ノリ」という愛称で呼んだ。他の選手にも、ファーストネームで声をかける。39歳の青年監督らしく、選手との距離の近さがうかがえた。
「呼びやすいから。それだけの理由です。みんなが『銀次』と呼び、登録名も『銀次』なのに、自分だけ苗字で『赤見内(あかみない)』と呼ぶのもおかしいでしょ」
こうした軽口が出るのも、苦悩からようやく解放された安堵の気持ちからだろう。
◆選手の「個」を見極める
かつてPL学園には、「鬼」と呼ばれたコーチがいた。清水孝悦という。PL時代に平石は清水の薫陶を受け、寿司職人でもある清水を今も師と仰ぐ。
清水がよく言うのは、「PL野球で大事なのは気配り・目配り」ということだ。自主練習する先輩がいたら後輩はスムーズに練習できるように目配りし、練習に必要なものがあったら気配りしてあらかじめ用意した。黄金期のPLでは部員全員がその心がけを共有していた。平石は楽天のグラウンドでもそれを実践している。
試合前の練習において、平石は打撃ケージでフリーバッティングを見守っていたかと思えば、投手陣の輪に入り、時にはバント練習にも付き合っていた。一箇所に留まらず、常にグラウンドを歩き回っているのだ。