そんな直子役には女優の瀧内公美。震災の被災地から週末だけ上京してデリヘルで働く主人公を体当たりで演じた『彼女の人生は間違いじゃない』で高く評価された彼女が、柄本佑演じる賢治を相手に野外や乗り物の中など、ふたりが過ごす先々でハードなラブシーンを見せる。
「今回はほぼ二人芝居ということもあり、自分の代表作になるという想いと覚悟で瀧内はラブシーンに臨んでいた様子でした。恋人時代の昔の写真を先に撮ったことでも、芝居に入りやすかったようです」(プロデューサーの森重晃氏)
劇中、ベッドで直子が涙する場面があるが、現場では泣かないよう指示していたという。だが幾度繰り返してもある瞬間に泣き顔になってしまうため、「ここは泣いてもいいんだなと思い直した」と荒井監督は語る。そんな瀧内自身の抗えない“身体の言い分”も、直子の生々しい女の部分を炙り出している。
◆死と隣り合わせのエロスが匂い立つ
原作では福岡だが、映画では秋田を舞台に物語が描かれる。
「西馬音内盆踊りをどうしても撮りたかったんです。亡者踊りとも呼ばれる踊りは生と死の狭間を感じさせ、踊り手が彦三頭巾や編み笠で顔を覆う姿には死と隣り合わせのエロスも匂い立つ。いつかこの踊りに男と女を絡めた作品を撮りたいと、ずっと狙っていました」(荒井氏)