ライフ

背筋がブルっ 夏の風物詩「怪談ばなし」はいつ始まったのか

草木も眠る丑三つ時…

 日本列島を炎暑が覆っている。エアコン、扇風機、冷感剤……寝苦しい熱帯夜に涼を得る手段はさまざまだが、たまには部屋を暗くして、日本古来の「怪談ばなし」で涼しくなるのはどうだろうか。身の毛もよだつ怪談ばなしのルーツを歴史作家の島崎晋氏が解説する。

 * * *
 夏といえば怪談。怪談といえば講談師にして人間国宝の一龍斎貞水かタレントの稲川淳二というくらい、夏の暑い盛りに怪談を聞くことで背筋を寒くするという“習慣”は、冷房の普及した現在でも廃れるどころか、逆にすっかり定番と化している。

 日本における怪談の歴史は平安時代にまでさかのぼれるが、夏の風物詩と化したのは比較的新しく、百物語の名で広く一般庶民にまで普及したのは江戸時代後期のようである。

 百物語の名は、人びとが黄昏時に集まって百本の灯をともし、恐い話を一つするたびに一つずつ消していき、丑三つ時(午前2時~2時半頃)、百の灯がすべて消えたとき、必ず怪異現象が起こるとされたことに由来する。

 百物語は余興として行なわれることもあったのか、昭和43年(1968年)公開の時代劇特撮映画『妖怪百物語』では、悪徳豪商が寺社奉行の接待に落語家を呼んで百物語をやらせるが、憑き物落としの呪いを省いたために妖怪たちから祟られ、豪商・寺社奉行ともに身を滅ぼすというストーリーだった。

 話を本筋に戻すと、江戸時代前期までの百物語は武士のあいだだけで肝試し、練胆の会として行なわれたもので、夏に限られてもいなかった。涼を感じるためではなく、いついかなる敵に遭遇してもたじろぐことのない精神を鍛えるための、いわば修行の一環であったのである。

 武士の嗜みとして百物語が行なわれるようになったのは室町時代のこと。人を殺すことに慣れた彼らが何を恐がるのかと訝しく思われるかもしれないが、刀や槍など通常の武器では歯が立たない妖怪や怨霊が相手となれば話は別である。ましてや、京の都は非業の最期を遂げた者が非常に多く、日本一の怨霊の溜まり場とも呼べるところ。地方から治安維持のため集められた武士たちにとっては「百鬼夜行」のイメージがいまだ強く、夜の暗闇から何が出てきても不思議ではない環境だった。

関連記事

トピックス

優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
《高市首相の”台湾有事発言”で続く緊張》中国なしでも日本はやっていける? 元家電メーカー技術者「中国製なしなんて無理」「そもそも日本人が日本製を追いつめた」
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《約200枚の写真が一斉に》米・エプスタイン事件、未成年少女ら人身売買の“現場資料”を下院監視委員会が公開 「顧客リスト」開示に向けて前進か
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
NEWSポストセブン