国内

障害のある子とない子が一緒に学ぶ学童、設立した保護者の物語

「インクルーシブ学童&保育所」を立ち上げたママたちがいる

 神奈川・横須賀市のバリアフリー子育て情報局『sukasuka-ippo』(以下『ippo』)は、同市の療育(障害児対象の幼稚園)相談センター『ひまわり園』の保護者会役員7名が立ち上げた一般社団法人だ。現在はインクルーシブ学童『sukasuka-kids』(以下『kids』)とインクルーシブ託児『sukasuka-nursery』(以下『nursery』)の運営も行い、インクルーシブ教育の先駆けとして注目を集めている。

「インクルーシブ」とは、「包括的な」「包み込む」を意味し、障害をもつ人ともたない人が一緒に学ぶ仕組みのことをいう。『ippo』代表理事・五本木愛さんに話を聞いた。

◆必要な人に情報が届かない現状に疑問

「娘のうららは、遺伝子疾患による『アンジェルマン症候群』。重度に精神発達が遅れ、発語がありません。彼女が『ひまわり園』に通っていた頃、私は障害をもつ園児の親代表として、障害福祉関係の会議へ多数出席する機会を得ました。

 会議では私の知らない福祉サービスの現状や法改正などが盛んに協議されていて驚きました。『当事者の私たちに届かない情報って何の意味があるの?』って。私たちは、情報もなく将来も見えない中で日々子育てをしていましたから」(五本木さん・以下同)

 五本木さんは、すぐに会議の内容を福祉関連の現状として園誌の『ひまわり通信』に掲載し始め、保護者間でも好評を得る。

 その手応えから、横須賀市内の障害児のママ全員に広く発信すべきと考え、2016年に情報発信サイト『ippo』を立ち上げた。

「会議の情報だけでなく、欲しい情報を自分たちで集め、取材し、記事を作り、配信する。『放課後デイサービスってどこにあるの?』『障害者が働く作業所ってどんな場所?』等々。取材を続けるうちに、『この仕組みが足りない』『この部分を工夫すれば育てやすいのに』と、疑問や欲しいものが具体的な形になって見えてきました。こうなったら、足りないものは自分たちで作るしかない!と(笑い)」

 独自に動けたのは、障害児のママにビジネススキルの高い人が多かったから。生まれた子供に障害があり会社勤務は無理。でも仕事や社会参加は続けたい…。サイト運営の収入源確保と人材活用の両面から、デザイン作成や制作物の受注を始め、2017年に法人化。同市の商工会議所に事業のノウハウや企業との連携を教えてもらう一方、地域のママを巻き込んだ「よこすかテレワーク」の仕事を担った。

「すでに障害児のママは組織化していました。ママたちにはワーカー登録を、商工会議所には地域の企業との橋渡しをしてもらう。ママたちの働き方の枠組みを作ったのは、会社とのパイプをつないでおけば、子供たちが働ける場も広がるのでは…と想定したからです」

◆「今日ね、うららちゃんが僕の名前を呼んだんだよ!」

 その一方で、五本木さんが取材を通して痛感したのが障害者に対する偏見や差別。さらに「やまゆり園」の事件で加害者が放った「障害者は生産性がない」「心失者」の発言が、障害者の親として心に突き刺さった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居の近影をキャッチ(2025年12月下旬)
《ゴルフ用ウェアで変装して百貨店に…》中居正広、外出頻度が増えている 表舞台では“盟友たち”が続々言及する理由
NEWSポストセブン
サッカー日本代表・森保一監督
サッカー日本代表・森保一監督 優勝を目標に掲げるW杯への意気込み「“日本人ならできる”という姿勢を示し、勇気や自信を届けたい」 
女性セブン
トランプ大統領と、金正恩氏(AFP=時事)
トランプ大統領は金正恩氏を「マドゥロ方式」で拘束できるのか──荒唐無稽と笑えなくなった国際政治の危険な“初夢”
NEWSポストセブン
中国人インフルエンサーがカンボジアの路上で変わり果てた姿で発見された(TikTokより)
《へそ出しタトゥー美女の変わり果てた姿》中国インフルエンサー(20)がカンボジアの路上で発見、現地メディアに父親が答えた“娘と最後に連絡した日”【髪はボサボサ、うつろな表情】
NEWSポストセブン
プロ棋士の先崎学九段(左)と日本推理作家協会の将棋同好会代表を務める小説家の葉真中顕氏
【2026年の将棋界を展望】崩れ始めた「藤井聡太一強」時代、群雄割拠を抜け出すのは誰か? 伊藤匠二冠だけじゃないライバルたち、羽生世代の逆襲はあるか【先崎学氏×葉真中顕氏対談】
週刊ポスト
米国によってニコラス・マドゥロ大統領が拘束された(時事通信フォト)
《大統領拘束を歓迎するベネズエラ国民の本音》「男女ともに裸にし、数日間眠らせず、窒息を繰り返させる…」国連に報告されていた“あまりに酷い拷問のリアル”
NEWSポストセブン
運転席に座る中居(2025年12月下旬)
《三歩下がって寄り添う高級ジーンズ美女》中居正広を今もダンサー恋人が支える事情「この人となら不幸になってもいい…」過去に明かしていた結婚観との一致
NEWSポストセブン
一般参賀にお姿を見せた上皇さまと美智子さま(時事通信フォト)
《新年を寿ぐホワイトドレス》「一般参賀に参加いただく必要があるのか?」美智子さま“お手振りなし異変”報道で波紋…上皇ご夫妻が行事に込める「内に秘められた心の部分」
NEWSポストセブン
新宿の焼肉店で撮影された動画が物議(左は店舗のInstagramより、右は動画撮影者より提供)
《テーブルの上にふっくらとしたネズミが…》新宿・焼肉店での動画が拡散で物議、運営会社は「直後に殺処分と謝罪」「ねずみは薬剤の影響で弱って落下してきたものと推察」
NEWSポストセブン
新年一般参賀に出席された秋篠宮家次女・佳子さま(2026年1月2日、撮影/黒石あみ)
《新年一般参賀で見せた“ハート”》佳子さま、“お気に入り”のエメラルドグリーンドレスをお召しに 刺繍とハートシェイプドネックがエレガントさをプラス
NEWSポストセブン
茨城県水戸市のアパートでネイリストの小松本遥さん(31)が殺害された
《水戸市・31歳ネイリスト女性死亡》「『誰かのために働きたい』と…」「足が早くて活発な子」犯人逃走から6日間、地元に広がる悲しみの声
NEWSポストセブン
新年一般参賀に出席された皇后雅子さま(2026年1月2日、撮影/黒石あみ)
《新年一般参賀の“ブルーリンク”コーデ》皇后雅子さまはスタンドカラーでフォーマルに、愛子さまはマオカラー風で親しみやすさを演出
NEWSポストセブン