101回目の夏の甲子園では、開幕してからも継投策で勝ち上がる学校が目立った。

 優勝候補だった東海大相模(神奈川)は、6人の投手陣にあって神奈川大会でもっとも投球回数の少なかった遠藤成を甲子園初戦(近江戦)の先発マウンドに送り、3人の継投で勝利。高校四天王の奥川恭伸を擁する星稜ですら、2回戦の立命館宇治(京都)戦では4投手を小刻みにつないで勝ち上がったし、奥川が165球を1人で投げ抜いた智弁和歌山戦の翌日となった準々決勝・仙台育英戦もエースを温存しての2投手の継投で勝利した。。

 ドラフト1位が確実視される奥川のいる星稜でもこうなのだから、今後はプロ野球のように投手の分業制が一般的となり、監督が信頼する投手を起用し続ける「エースと心中」なんぞ、死語となっていくだろう。何より、大船渡・佐々木の地方大会決勝での登板回避を受け、“世間が許さない”という空気が強まっている。

 963──。

 この数字は、鳴門のエース左腕・西野知輝が徳島大会5試合、甲子園2試合で投じた球数だ。敗れた2回戦・仙台育英(宮城)戦の8回裏、西野に代打が送られ、この夏初めてマウンドを譲った。試合後、同校の森脇稔監督は、「なぜひとりで投げさせたのか」という、報道陣の追及にあっていた。

 甲子園が決まってからというもの、繰り返し同じ質問を受けていた森脇監督は、うんざりしたように、こう回答した。

「もう何回も説明しています。もう何回も……。試合展開が、継投を許す状況になかった。徳島大会はくじ運が悪く、厳しいゾーンに入ってしまい、西野に頼らざるを得ない状況でした」

◆50~60球で交代させる

 投手の酷使を避け、肩やヒジの故障を防ぐことを目的に、日本高等学校野球連盟は2019年4月、有識者会議を発足した。今後は球数や登板間隔の制限の導入を見込んで議論がかわされていく。そうした高校野球の未来を見据え、各校が複数投手の育成に力を入れている。それゆえ、時流に逆行するようにエースに頼った鳴門には、厳しい目が向けられていた。

 全国的に私立が優勢の時代にあって、徳島県は私立が春夏の甲子園にたどり着けていない唯一の県である。森脇監督は複雑な心中を語る。

「継投が現在の主流なのは間違いないでしょう。ただエースがいて、2番手の子が大きく力が落ちれば、試合も終わってしまいますよね。確かに、(9回に2番手として登板した)竹内勇輝(3年)の今日のピッチングは良かった(自己最速を更新する141キロをマークし、無失点に抑えた)。ですが、地方大会前の練習試合の内容であれば、なかなか起用には踏み切れなかった。起用を決めるのは、私であり、選手のプレーを見てきた関係者なんです……。過去、板東湧梧(JR東日本─現・福岡ソフトバンク)がいた時は、今年のようにひとりで投げさせました。その翌年は、3投手の継投で戦いました。選手の巡り合わせによって、投手起用もそれぞれでしょう。今年の仙台育英さんのように、4人の投手が同等にエース級で、力があれば継投も考えられるんでしょうが」

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