国内

慰安婦少女像のどこが「表現の不自由」なのか 呉智英氏疑問

「表現の不自由展・その後」は展示中止となった(共同通信社)

 あいちトリエンナーレの企画展「表現の不自由展・その後」の中止騒動は、なかなか収束の気配を見せない。評論家の呉智英氏が、表現の自由・不自由とは本来、どういったものなのか、事例をあげながら解説する。

 * * *
 八月一日から始まったあいちトリエンナーレの企画展「表現の不自由展」騒動が今も続いている。議論の中心にあるのは慰安婦を象徴する「少女像」だが、これ、いつ表現が不自由になったのか。

 少女像はソウルの日本大使館前に二〇一一年から堂々と設置されている。しかも公道にである。これ以外にも韓国各地に、さらにアメリカやドイツにもいくつか設置されている。日本でも、公道や公有地は当然駄目だが、韓国大使館の玄関や会議室なら設置は自由である。個人の家でも全く自由だ。二〇一二年に東京都美術館で開催された国際交流展だけが、特定の政治思想に関連するとして、これを撤去した。国際交流の本義にも反するはずだ。要するに、趣旨が違うから撤去したのである。

 こうした少女像のどこが「表現の不自由」なのか。津田大介ら破廉恥な運動家連中がわざわざここで表現の不自由を作り出したのだ。ありもしない交通事故を作り出す「当り屋」商売と同じである。

 本当の「表現の不自由展」なら、是非やってもらいたい。本欄でも指摘してきたように、戦後七十余年一貫して表現が不自由になっているからだ。いくつか例を挙げる。

 舟越保武(ふなこしやすたけ)は二十世紀日本の美術界を代表する彫刻家である。子息の舟越桂も著名な彫刻家だ。その舟越保武の最高傑作『病醜のダミアン』が、これを所有する埼玉県立近代美術館で公開展示できなくなった。一九八四年のことである。その後、鑑賞希望申請者のみ別室で鑑賞できるようになった。十五年後に『ダミアン神父像』と改題してやっと公開展示が可能になる。

 これは病気への偏見を助長し差別しているという声が出たからである。舟越の制作意図とは正反対の“抗議”に屈服したのだ。

関連記事

トピックス

6月3日に亡くなった長嶋茂雄さんとの写真を公開した大谷翔平(公式インスタグラムより)
《さようなら長嶋茂雄さん》大谷翔平から石原裕次郎まで、誰からも愛された“ミスター”の人生をスターたちとの交流で振り返る 
女性セブン
人気インフルエンサーがレイプドラッグの被害者に(Instagramより)
《海外の人気インフルエンサーが被害を告発》ワインに“デートレイプドラッグ”が混入…「何度も嘔吐し、意識を失った」「SIMカードが抜き取られていた」【オーストリア】
NEWSポストセブン
『激レアさんを連れてきた。』に出演するオードリー・若林正恭と弘中綾香アナウンサー
「絶対にネタ切れしない」「地上波に流せない人もいる」『激レアさんを連れてきた。』演出・舟橋政宏が明かす「番組を面白くする“唯一の心構え”」【連載・てれびのスキマ「テレビの冒険者たち」】
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
現場には規制線がはられ、物々しい雰囲気だった
《中野区・刃物切りつけ》「ウワーーーーー!!」「殺される、許して!」“ヒゲ面の上裸男”が女性に馬乗りで……近隣住民が目撃した“恐怖の一幕”
NEWSポストセブン
シンガポールの元人気俳優が性被害を与えたとして逮捕された(Instagram/画像はイメージです)
避妊具拒否、ビール持参で、体調不良の15歳少女を襲った…シンガポール元トップ俳優(35)に実刑判決、母親は「初めての相手は、本当に彼女を愛してくれる人であるべきだった」
NEWSポストセブン
「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ犯から殺人犯に》「生きてたら、こっちの主張もせんと」八田與一容疑者の祖父が明かしていた”事件当日の様子”「コロナ後遺症でうまく動けず…」
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「本人にとって大事な時期だから…」中居正広氏の実兄が明かした“愛する弟との現在のやりとり”《フジテレビ問題で反撃》
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「兄として、あれが本当にあったことだとは思えない」中居正広氏の“捨て身の反撃”に実兄が抱く「想い」と、“雲隠れ状態”の中居氏を繋ぐ「家族の絆」
NEWSポストセブン