この日の万歩計は、午前10時台の休憩までに6873歩で5.49km、お昼休憩までに1万2880歩で10.30km、5時に上がるときには、2万8761歩で23.00km。初日と比べると1日に歩いた距離が3kmほど延びている。これは、足が少し慣れてきたためなのか、それとも作業に慣れてきたためだろうか。
などと1階のロッカーで考えながらメモをしていたら、長椅子の隣に座っている40代の男性が、声を抑えて携帯電話で話すのが聞こえてきた。
「ケアマネジャーの本村さんは、いらっしゃいますか。はい、川田です。明日、家に来ていただけるとのことなんですが、大勢の人が家の中に入ってくると母親がひどく怒りだすもので。……はい、すみません。ベッド搬入の方だけなら、問題ないと思います。どうぞよろしくお願いいたします」(名前はいずれも仮名)
と電話を持ったまま頭を下げる。男性は、黒のポロシャツに、黒のジーパン、黒のジャケットに、黒の靴という黒ずくめの服装。年老いた母親のために介護サービスを利用しながら、ここで働いているのだろう。果たして、ここの時給だけで介護サービスの費用は間に合うものなのか。口に出せるはずもない質問を飲み込んで、私は送迎バスに向かった。
しかし、介護が必要なのは彼の母親だけではない。
物流センターの男子トイレの個室には、「おむつを流さないでください」という張り紙があった。