国内

元キャリア官僚が語る「厚労省がブラック職場である理由」

生々しい証言が並ぶ(厚労省の若手改革チームがまとめた緊急提言の概要版より)。

「毎日いつ辞めようかと考えている。毎日終電を超えていた日は、毎日死にたいと思った」

 これはブラック企業に勤める、ある会社員の悲痛な叫び……ではない。実はこの言葉は厚生労働省職員によるものだ。8月26日、厚労省の若手改革チームが業務の見直しを求める提言書を根本匠厚労相に手渡した。厚労省のHPでも公開されているその提言書は90ページに及び、それとは別にわかりやすくデザインされた「概要版」(55ページ)もアップされている。その最初のページに、冒頭の言葉が掲げられている。

 提言書は厚労省の20代、30代が中心となり、本省の全職員約3800人に行ったアンケートなどをもとにまとめたものだという。ほかにも、「厚生労働省に入省して、生きながら人生の墓場に入ったとずっと思っている」「家族を犠牲にすれば、仕事はできる」など、現役職員や退職者の赤裸々な告白が並ぶ。

 厚労省が抱える課題として「人員不足」「非効率な事務作業」「マネジメント意識の低さ」「キャリア像の固定化」「劣悪なオフィス環境」が挙げられているほか、「国会業務」や「議員へのレクチャー」など、官庁特有の業務の効率改善に関する提言もある。中には「何をして過ごしているかよくわからないように見える幹部・職員がいる」「オフィスが暗い、狭い、暑い」といった記述もあり、衝撃的だ。

「働き方改革」を主導し、範となるべき監督官庁がこの体たらくでは……という忸怩たる思いが当の職員たちにはあるようだ。職員の不満は臨界点に達しているから、改善していきたいという要望であり、決意表明ともいえる。

 厚労省のキャリア官僚として22年在職し、退職後はアクセンチュアやマッキンゼー&カンパニーなどの民間企業にも所属した経験のある武内和久氏は、厚労省時代をこう述懐する。

「特に若手の頃は、庁舎を出るのは午前1~2時ごろ、国会対応や法案作成があると午前4~5時もざら。余りに眠くてトイレの個室で仮眠することも。毎朝、新聞が恐怖でしたね。自分が担当している政策が一面に載ると、問い合わせやクレームが殺到するからです。財源の限界があってやりたい政策ができない葛藤、議員から罵倒されるストレスなどでメンタルを損なう人もいました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン