ラグビーにおける重要な局面であるスクラムやラインアウト(ボールがタッチラインの外に出たときにゲームを再開するためのプレー)では、ボールを両チームの選手が対峙する真ん中に投げ入れなければならない。それはゲームを公平に進めるためのもの。ラグビーのルールはフェアネス(公平さ)を重視しているように見えるのに、一歩グラウンドを出ると、まったく“フェアではない”ように見える。
そこに強烈な楔を打ち込んだのが、前回の2015年イングランド大会における日本代表の躍進だ。今回のW杯日本開催に向けて、日本でテストマッチを行いたいティア1の国々の思惑もあり、ティア2である日本代表はこの4年間ですべてのティア1国と対戦することができた。日本代表のレベルアップに、上位国との対戦経験が寄与したことは間違いない。
では今後、日本はティア1に参入することができるのだろうか、前出の平林氏はこう説明する。
「日本がさらに強くなることが大前提。その上でシックス・ネイションズやザ・ラグビーチャンピオンシップに参加するようになれば、ティア1の枠組みに入れるということ。プロラグビーをやるのかやらないのかが大きな要素だからです。日本ラグビーフットボール協会もそれをモチベーションに、2021年シーズンからのプロ化を目指しています」
日本ラグビーのプロ化に勢いをつけ、将来、シックス・ネイションズやザ・ラグビーチャンピオンシップに参戦するためにも、今回のW杯日本開催は千載一遇のチャンスである。イギリス生まれのスポーツらしい、階級を重んじる不公平な伝統に、実力で風穴を開けていく──ラグビー日本代表のストーリーはなかなか痛快である。
●取材・文/岸川貴文(フリーライター)