このように裁判所が認定しただけに、ツイッターのプロフィール欄で時々見かける「ツイートのRTや『いいね』は必ずしも賛意を示すものではありません。備忘録です」という注意書きは実は有効だったのだな、と感じた。
この文言を見る度に「そんなの分かってるよ。わざわざ書く必要あるの?」と思っていたのだが、まさかの効果アリ(の可能性)が明らかになった判決だった。橋下氏と岩上氏の思想が異なることは元々分かっていたが、もしも岩上氏がプロフィール欄に件の一言を書いていたらどうなっていたか……? とも思うのである。支払額は減額になったかもしれないし、敗訴しなかったかもしれない。
私は岩上氏が運営するIWJのメルマガを毎日受け取っているが、そこでは今回の裁判について「スラップ訴訟」(*注)と表現した。同団体のサイトでも「本訴訟提起は、対抗言論での反論という手段を一切とらず、事前交渉の一切ない中での言論抑圧目的と言わざるを得ない」と控訴を宣言している。
【*注/政治家や大企業などが、提訴によって言論や運動を抑圧しようとすること】
現在私はツイッターの運用を弊社の従業員に任せており、イベントや執筆記事の告知以外は一切のツイートをしていない状況にある。RTごときで訴訟沙汰になり、敗訴することが分かった以上、たかだか3.7万フォロワーの私ではあるがその対象になり得るわけで、つくづくやめてよかったと思っている。
自由な議論の場として元々期待されたインターネットや、もはや死語となった「ウェブ2.0」という言葉だが、その虚しさがますます明らかになった今回の判決である。悔しいが、SNSからの撤退こそ我が身を守るかもしれない。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。
※週刊ポスト2019年10月4日号