もちろん混雑時にはウインズでも入場制限を行なうため、午前中から長い行列ができ、馬券購入を諦めざるを得ないこともあった。この時代はまだ、口頭で買い目を伝えての購入だ。ウインズでは1日分をまとめて買う客も多かったので、一人をさばくのに余計に時間がかかる。締切間際になると、後方に並んでいる客から「早くしろ!」と怒号が飛ぶのも、おなじみの光景だった。「馬が好き」とか「レースの醍醐味を堪能する」というよりも、純粋にギャンブルとしての場所だった。

 平成になってからは、毎年のように新しいウインズがあちこちにオープンする(もちろん昭和の時代から何年もかけて地元の理解を得るため折衝を重ねてきた)。平成6年の香川・高松からはじまり、秋田・横手、鳥取・米子、青森・津軽、長崎・佐世保、山口・小郡など、それまで中央競馬と縁が薄かった地域にも建設された。子供の遊び場なども完備され、家族連れで出かけても違和感がない、明るい雰囲気の施設ばかりだ。また、有料定員制の「エクセル」や、非滞留型の「ライトウインズ」、さらに地方競馬場や、地方競馬の場外発売施設でも発売されるようにもなった。非開催の競馬場も、「パークウインズ」などと呼ぶようになった。

 しかし、世間では携帯電話が徐々に普及。平成7(1995)年に「ウィンドウズ95」が発売されてパソコンも身近になりつつあった。平成10年には電話・インターネット投票の加入者が100万人に達し、売上も1兆円を超えるが、それでもまだ30%以下で、ウインズでの売上が倍以上を占めていた。(この項続く)

●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。

※週刊ポスト2019年10月4日号

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