クレームの多様化は「“ネットの普及”と“高齢化”が原因」だと、山下さんは言う。

「SNSなどの普及で、クレーマーたちは『ネットで拡散するぞ』という新しい“脅し文句”を得てしまいました。こちらに非がなくても、ウソや個人情報をネットでばらまけば、ごく短時間で相手を追い込むことができます。それを恐れて必死に謝罪したり、お詫びの品などを渡すと、それもまた“神対応”として拡散されます。すると、征服欲を満たすことや見返りを狙った悪質なクレーマーの“カモ”にされてしまうのです」

「マニュアルではなく、相手が本当に求めている“ゴール”を見抜くべき」と山下さんは言うが、高齢者の“ゴール”には注意が必要だという。

「年を取って仕事や子育てといった生きがいを失うと、承認欲求が満たされなくなり、クレーマーになってしまう高齢者が後を絶ちません。しかし、こうした“シニアクレーマー”は、はじめは善意で若者を“指導”する場合がほとんどで、八つ当たりしたいわけではないのです」

 一度“指導”がうまくいくと「もっと何かしてあげたい」という思いが募り、悪く転べば暴走する。その結果、しつこく若者を指摘する“シニアクレーマー”になる。

 前出のAさんの義母は、嫁を思って言っていた小言がエスカレートして孫のことにまで口を出すようになり、つい大声を出してしまった。

「この場合は『将来のため、孫によい成績をとってほしい』というのが、義母の本当の気持ち。怒鳴られたからといって、必死に謝罪や言い訳をするのは的外れです。“子供のことを大切に思ってくれているんですね”と、義母の気持ちを汲み取って代弁し、感謝の気持ちを表してください」

 これまでは謝罪や賠償で“問題(不満)の解決”ができればよかった。しかし、今やクレーマーが求めるものや、その背景までもが千差万別であり、対応の仕方も難しくなっているのだ。

※女性セブン2019年10月10日号

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