和を以て貴しとなすのは日本人の国民性だ。だが、外国人の問題となると異なる空気が生まれることがある。コラムニストのオバタカズユキ氏が指摘する。

 * * *
 日本って残酷な人が多い国なのかな……。そんな思いを抱かざるをえない「事件」報道が、先日、ネットニュースとして流れた。

 朝日新聞デジタルの当該記事によると、今年の6月、長崎県の大村入国管理センターに収容中のナイジェリア人男性が死亡した問題で、法務省出入国在留管理庁が10月1日、その死因が食事や治療を拒否したことによる餓死だったとする調査結果を発表した。男性は、2000年に入国、窃盗罪などで実刑判決となり、仮釈放された2015年に国外退去命令を受け、2016年に同センターに移送されていた。

 そして、男性は一時的に外に出られる「仮放免」などを求めてハンガーストライキを行っていた。入管職員がハンストを把握したのは今年の5月末で、6月上旬までは点滴を受けさせるなどしたが、その後男性が治療を拒否していたという。

 同記事の後段に、こんな文面がある。〈センターは、食事を拒否する収容者は医師の判断で強制的に治療できるとした2001年の法務省通達を、非常勤の医師に知らせていなかった〉。

 当「事件」で最も重要というか残念なのはこの一文の内容である。なぜセンターが法務省通達を非常勤医師に知らせていなかったのかはわからないが、結果、男性を死亡させてしまった責任はとても大きい。以前より入管の収容者に対する扱いのひどさは、難民支援団体などが訴えてきたが、その管理の至らなさから餓死者を出してしまったことは、相当深刻な問題だと思う。

 だいたい6月に亡くなっていて、死因が10月にようやく発表されるっていうのはなんなのだ。7月18日配信の西日本新聞ニュースの記事によれば、〈収容期間は3年7カ月に及び、亡くなる前は隔離された状態で衰弱していたという。センターは死因や状況を明らかにしておらず、支援者からは第三者機関による原因究明を求める声が上がって〉いたそうだ。餓死とわかっていながら、それと知れて批判されることを恐れ、なかなか発表しなかった可能性大である。

 ところが、ネット上での反応を見てみると、私のように問題視しているのは、いわゆる人権活動家のような人たちばかりで、逆に「センター側には問題がない」とし、亡くなったナイジェリア人男性の問題のほうを指摘する声のほうがずっと多く目につく。ヤフーニュースのコメントから主なものを引いてみると、たとえばこんな感じなのだ。

〈日本に来ないで欲しい。ハンガーストライキは母国ですればいいやんか〉
〈ハンスト&治療拒否なんて、どんな理由があろうとも大事な命を自らの意思で盾にして入国要求をする彼の脅迫のような行いには全く同情出来ません〉
〈ハンストってすごく甘ったれな抗議だと思う。「俺の健康を損なわせたくなかったら言う事をきけ」って脅してるんでしょ。人権がしっかり守られてる国が相手だからこそできる甘え〉

 ハンストという行動が、これほど責められるものだとは想像もしていなかったので驚いた。ナイジェリア人男性が仮放免を求めても許可されなかった理由について、センターは窃盗事件が「組織的で悪質だった」と説明している。より詳細がわからないため、これが理由として妥当かどうかは判断できないものの、男性本人にとっては極めて理不尽なことだったのだろう。だから、命をかけてハンストを続けたのだ。

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン