一方、英語だけでも受験できるスタイルが出てきた背景は、学校ごとに事情が異なるので一概には言えないのだが、これからのグローバル化社会を見据え、また英語の教科化を踏まえ、学校の方向性をしっかりと打ち出しておきたいという積極的な意味合いがあるだろう。
また、進学塾に通っている受験生だけを相手にしていても募集人員は埋まらないので、近年急増している英語塾に通っている子にも中学受験をしてもらいたいというシビアな現実の両面がある。
先に英語入試にはスタンダードなスタイルはないと記した。では具体的にどのように行われているのだろうか。ここでは2020年度入試で新たに実施する学校を例にとって見てみよう。
【佼成学園(男子校)】「Super English入試」を新設。英検準2級が目安
【日本大学豊山女子(女子校)】「英語インタビュー入試」を新設
【三輪田学園(女子校)】「英検利用入試」を新設
【湘南白百合(女子校)】4科or国算+英語資格を新設。英語資格は、英語検定のグレードを得点化し、国算の2科の得点と合算して判定する
【淑徳(共学校)】「英語入試」を新設。書類審査(英語資格)・算数・作文・面接で判定。英語資格は英検3級のほかGTEC、TOEIC、TOFELなどでも基準あり
ペーパーテストあり、対話型あり、検定利用型ありの多種多様な英語受験が可能になったといっても、今のところ併願が利かない状況にあるため、どこも受験者数は限られている。
また、前述したように英語入試を実施している私立中学こそ首都圏で125校もあるが、この入試で大勢の入学者を確保している学校はない。少数でいいから、高い英語力を持った子に来てもらえれば、「将来の大学入試で合格実績を上げてもらえる」「高い英語力で周囲に好影響を与えてもらえる」ことを期待して行っているのが実情だ。
では、将来「英語入試」の受験者が増え、中学入試は英語を含む5教科に定着するのだろうか? 結論から先に言えば、私は当分の間は「5教科化」はないだろうと考えている。それを、塾側、学校側、それに受験生サイドそれぞれから考えてみよう。