「普通は風俗店を作ると、面倒を見てもらうために店が地元のヤクザに直接、金を払う。だがあの街では、大家が店子の風俗店からもらう家賃の中から、地元のヤクザが金をもらっている」

「家賃が20万円だとする。面倒見のみかじめ料が3万円かかるなら、大家は最初から店子に家賃として23万円を請求する。店子は大家に23万円を支払う。大家は所有しているビルに10軒店舗があれば、10軒分をまとめた30万円をヤクザに支払う。街全体がそういうシステムだから、このビルのこの店だけが例外ということはない」

 その幹部も、家賃に上乗せされたみかじめ料を払っているわけだ。

 もともとは地元のヤクザが街を守るために作ったシステムだという。ところがこれが、今では街を変える一因になってしまっているらしい。

「大家が店をまた貸しされても、よその暴力団や半グレが入ってきて店をやっても、外国人が店を出しても、地元のヤクザは『なんでお前らがここで店をやっているんだ、出て行け』とはいまさら言えない。彼らには大家から間接的に金が支払われ、その金をもらってしまっているから仕方がない」

「中国やバングラが店を出し問題が起きたとする。個人的に払っていないから関係ないといっても、彼らは金をもらっているので結果的に面倒を見ることになる」

 店子もこのシステムを知っていると思うと、幹部は話す。おそらく何かあれば、地元に面倒を見てもらえると店子側も考えているだろう。

「以前はよその組織はここでは店をやらないという暗黙の了解があったんだが、今はそんな時代ではないからね」

 街によそ者が入りこみやすいということは、地元のヤクザが弱体化しているということでもある。

「よかれと思ったシステムが、街を変えてしまい、今では地元の人を苦しめているんですよ」

 条例が改正されても罰則が強化されても、おそらくこの街のシステムはこれからも変わらない。

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