同記事で浮上した捜査情報漏洩事件において、疑惑を持たれていたのが愛知県警のH刑事だった。野口被告とその刑事の間に、果たして何があったのか。野口被告は、取材に対してこう語った。
「2016年ごろのことです。金塊事件について福岡県警の捜査が進められているという噂が流れるなか、私たちは金塊事件グループのメンバーからの紹介でHという愛知県警の刑事と会うことになったのです。私はHには、一通りの事件にいたるまでの経緯を説明しました。するとHは金塊事件にはさしたる興味を見せる素振りもなく、こんな情報を提供してきたのです。
『福岡(県警)が3~4人、名古屋に入ってきているぞ。うちのキャップが福岡県警の本件捜査班員と昔からの知り合いで、そこから情報が入ってくる』
そのときのHは親身に相談に乗ってくれ『もし、お前らが福岡(県警)に逮捕されても、俺が責任をもって後押しをする』とも言ってくれていた」
福岡県警の捜査について、H刑事は様々な情報を口にするなかで、新たな捜査手法についてもこう明かすことがあったという。
「あるときH刑事から、こう言われたのです。『12月から通信傍受法の対象拡大が施行され、どこの警察も申請を出すはずだ。傍受の許可が下りるまでにおそらく1か月から2か月はかかる。だから2~3月からは電話の会話には気をつけたほうがいい』
私たちはそのときはじめて通信傍受法の存在を知った。2016年5月に改正された通信傍受法では、詐欺や窃盗容疑でも通信を傍受できるように適用範囲が拡大されていた。この改正法は同年 12 月から施行されており、申請が通れば私たちの電話の内容を警察が合法的に傍受できるようになるという。現に福岡県警からは、私たちが(2017年)3月ごろを境にいままで使用していたケータイでの通話が減ったのを通話記録を見て分かったと後に言われました」