国内

大嘗祭、天皇陛下は休む時間ほとんどなし 参列者も過酷

1990年(平成2年)11月22日、大嘗祭に臨まれた天皇陛下(現在の上皇陛下)(写真/共同通信社)

 11月10日の祝賀パレードを終え、いよいよ14日、天皇陛下即位の関連行事のクライマックス「大嘗祭」が挙行される。

 大嘗祭とは、皇位継承に伴う一代一度の重要祭祀である。5月1日に行われた、剣や勾玉など三種の神器を承継される「剣璽等承継の儀」、即位を内外に宣言される10月22日の「即位礼正殿の儀」に続く、新天皇のみが行うことができる儀式だ。

 國學院大學研究開発推進機構准教授で、神道史研究者の大東敬明さんが話す。

「先の2つの儀式で『即位の礼』は終えており、大嘗祭は天皇になるための儀式ではありません。大嘗祭の意義は、天皇が即位後初めて、皇祖である天照大神に新穀を供え、五穀豊穣と国家の安寧を祈ることにあります」

 大嘗祭は、儀式の途中に宮内庁職員ですら立ち入ることができず、中身も公表されない「秘儀中の秘儀」だ。謎に包まれた祭祀であるため、「天皇が何を行うのか」についてこれまでさまざまな説がまことしやかに語られてきた。

◆かつては「民衆も集まる祭り」だった

 天皇が即位して初めて行う「新嘗祭(にいなめさい)」のことを大嘗祭と呼ぶ。新嘗祭とは、毎年秋に開かれる収穫祭のことだ。大嘗祭の始まりについて、民族研究家の森田勇造さんが話す。

「大嘗祭は、飛鳥時代の673年に即位した天武天皇の時代から始まったとされます。当時の日本は常に戦争が絶えず、天武天皇は皇室の力を強くし、国を治めようと考えました。

 そのためには、即位を宣言するだけでは足りないと考え、古来からある『新嘗祭』という行事を利用して、日本でいちばん偉い神様である天照大神に食料を捧げることで、天皇の権威を示したのです」

 大嘗祭は、祭祀の舞台「大嘗宮」を皇居・東御苑に新設して行われる。大小三十余りの建物が今年7月の着工から約3か月で建設され、設営・解体関連費19億700万円を含めた全体の費用は約27億円にのぼる。終了後は、11月21日~12月8日の一般公開の後、取り壊される予定だ。

 現代は国家主導で、費用も規模も大がかりだが、かつての大嘗祭とは大きなギャップがある。國學院大學研究開発推進機構の研究員で、宮中祭祀の研究が専門の木村大樹さんが話す。

「大嘗祭は、応仁の乱に始まる戦国時代以降、200年以上中断した時期があり、それ以前の大嘗祭とは様相が異なる部分があります。

 当時の大嘗祭は京都で行われており、お供えする新穀を献上する悠紀(ゆき)地方(東方)と主基(すき)地方(西方)の民衆が上京し、北野(現在の京都市上京区、北区。京都御所の北方)の地で準備を行いました。当日には、大規模な行列をなして供え物の米や酒などを大嘗宮まで運び込みました。現在の山車の原型ともされる『標の山』が供え物を先導し、その様子を見ようと貴族から庶民まで大勢の見物客が詰めかけたようです。

 また当時の大嘗宮は、上京した悠紀・主基地方の人たちが中心となって、7日前から建設を始め、たった5日で仕上げたとされます。平安時代の史料『儀式』によると、儀式の中心となる『悠紀殿』『主基殿』は現在より小さく、また床は張らずに、土間に萱や畳を敷くような簡易的な形式だったようです」

関連記事

トピックス

前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン