どれだけ賛同してもらえるか見当もつかず、当初は東京新聞の半面を目標に呼びかけを始めたが、目標の3倍超の資金が集まったため、新聞一面に広げて更に同じ新聞社が発行する中日新聞、北陸中日新聞も使って、ファンの思いが詰まった広告が掲載されることになった。
なぜファンはSNSで連携しつつも「新聞広告」という手法を使うのか。実はSMAPファンと新聞広告の間には長い歴史がある。2016年8月、SMAPの解散発表に傷つきながらもファンは翌月に控えた25周年に「何か発信できないか」と考えた。ツイッターをはじめとしたSNSでは、「新聞に広告を出そう」というアイデアが出たのだが、さすがに全国紙に全面広告を出す場合、金額は高過ぎる。そんな中、「個人広告」を皆で出せばいいのでは、という提案が出たのだ。
この案を基に新聞各社へ問い合わせ等をファンは行い、結果的に同年9月9日に東京新聞、河北新報、北日本新聞、西日本新聞などに5人を応援する個人広告が多数掲載されたのだ。特に東京新聞の個人広告欄「TOK TOK」(当時・現在は「T-Voice!」という新しい欄に)には84件も寄せられた。そしてこの動きは単発で終わらず、署名活動などで心身を削るファン同士で元気づけるかのように再びSNSで呼びかけ合い、11月1日には東京新聞に200件を超える個人広告が載った。
その後もメンバーの誕生日やベストアルバム発売日に「SMAPファンが一斉に新聞の個人広告を掲出」といった流れが定着し、さらに「SMAP大応援プロジェクト」と題されたプロジェクトではファン1万3000人からクラウドファンディングで集められた資金を使い、年末の朝日新聞で大々的に応援広告を掲載された。この広告は日本新聞協会の新聞広告賞で優秀賞に選ばれた。なお、地方新聞の個人広告欄には2017年以降も節目の日にSMAPファンのメッセージが載り続けている。
そして、2017年9月22日。独立した稲垣、香取、草なぎの3人が「新しい地図」の活動開始を、東京新聞・朝日新聞での見開き全面広告で宣言した。3人は新聞広告という形で繋がったファンに対し、自らも新聞広告の形でアンサーを送った形となった。この広告は2018年に両新聞社でそれぞれ広告賞を受賞するに至った。
こうした流れを経た上での11月18日の新聞広告掲載だが、「発起人」は今回の広告掲出の意図をこう語る。
「ただただ『わたしたちはSMAPファン、今もこれからも変わらない』という想いです。それを、令和元年に胸を張って言いたかったのです。ビートルズファンがずっといるように、SMAPファンもずっといる、と。それぞれに色々な想いはあるはずですが、このプロジェクトではファンだけでは到底及ばないような現状の変化は求めず、皆が一貫して『変わらない』と自信を持って言える気持ちだけを掲げようと決めました」