うつ病を含む感情障害の患者は全国に約127.6万人いる(※厚生労働省『患者調査』2017年より)。特に40~50代男性の発症が増えており、多くの妻にとって「夫がうつ病になり失業…」という事態は他人事ではない。もしそうなったらどうすべきか──専門家に聞いた。
◆自分は弱くないという思い込みで症状が悪化
うつ病を発症する中年男性は、過重労働を勤勉にこなす、社会的に成功した人物が多い。競争社会である現代の先頭を走っている人間がなりやすいのだ。
「難関大学から大企業に入り、管理職になるなど、厳しい競争社会を生き抜いてきた彼らには、自信と誇りがあります。しかしこういう人ほど、少しでもレールから外れるようなことがあると、弱さが露呈しやすい。昇進や異動、転職はもちろん、夫婦や親子の不仲、親の介護問題などによる環境の変化が発症のきっかけになります」
とは、うつ病専門医の廣瀬クリニック院長・廣瀬久益さんだ。些細な変化がうつ病発症の引き金にはなるが、重症化するには、中年男性ならではの思い込みがあるという。
「彼らの多くは、“うつ病になるのは弱い人間だ”という思い込みがあり、不眠やイライラ、だるさ、食欲不振などの初期症状が出ても、“これはうつ症状じゃない、自分はそんなに弱い人間ではない”と、気力で振り切ってしまうんです。その結果、無理を重ね、起き上がれなくなるなどの症状が出て病院に連れて来られ、ようやくうつ病だと認識します」(廣瀬さん)
うつ病の治療は、一筋縄ではいかない。廣瀬さんの約40年間の治療経験から、抗うつ剤ですら、効くのは約3割の人だけだという。治療には長期戦で臨まなければならず、家族の理解は不可欠なのだ。
「うつ病を改善するには、己を知ることが大切なんです」(廣瀬さん)
中年男性のうつ病は、人生の折り返し地点で自分を見つめ直す機会なのかもしれない。
※女性セブン2019年11月28日号