作者の乃木坂氏は「結婚に対してポジティブな印象しかない」と語る

──『医龍』など他の作品でもそうだと思いますが、描き始めるまでに取材をかなりされているのだろうと想像しました。児童相談所や拘置所の取材で印象深かった事柄はありますか。

「事柄よりも、その場所の空気感というか、直に会って感覚でわかる部分のほうが大事で、知識よりもその場にいて初めて『あ、これで描けるわ』という感触が得られる瞬間があるんです。フランス革命の漫画を描いた時も、実際にベルサイユ宮殿を見て、やっと腑に落ちた部分があったんです。『医龍』のときは手術室を見学させてもらって、感覚で分かってようやく描けるというか。

 例えばこの部屋の隅っこってどうなってるんだろうとか、そういうことが気になるんですよ。床はどんなんだろうとか。空気はどんな感じなのかなとか。逆にそれがわかると気持ちの中でゴーサインが出るというか、取材はそこが一番大事かなと思います」

──第1集での見所は、アラタと真珠の拘置所面会での言葉の駆け引きだと思います。面会室という殺風景な場所でのシーンにもかかわらず、とても惹きつけられました。

「密室劇は『医龍』の時にやっていて、教授と教授の顔芸で一話を描いたこともありますので(笑い)、その経験が活かされていると思います」

──これからの展開がとても気になります。連載開始時から、すでに最終話を決めているものなのでしょうか?

「大雑把な話の流れは当然あるわけですが、そこにどうたどり着くかとか、たどり着いた時にどんな気持ちになっているかとか、そういうところは僕もまだ全然分からないし、むしろそれが大事かなと思っています。

 すごくハッピーなことが起きるとしても主人公たちはネガティブな気持ちでいるかもしれないし、何かネガティブなことが起きるかもしれないけど主人公たちは満ち足りているのかもしれないし。最終回は決めちゃうと気持ちが『作業』になっちゃう場合があるので、どう締めるのかは最初にあまり考えないし、そこにたどり着いた時に、最適な最終回があるのかなと思っています」

◆取材・文/高橋ユキ(ジャーナリスト)

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