日本の場合、物件によっては「重要事項説明書」に水害の履歴などが小さく簡単に記載されているが、今後は行政が「洪水プレイン」の考え方を取り入れるとともに、不動産を売買する時はすべてのリスクを明確・詳細に開示することを義務付けるべきである。
日本はゼネコンも歴史の教訓に学んでいない。今回の豪雨では川崎市・武蔵小杉のタワーマンションで地下の電気設備が浸水してエレベーターが動かなくなり、断水も発生した。しかし、1995年の「阪神・淡路大震災」で神戸のポートアイランドや六甲アイランドの高層マンションは液状化現象で地下の電気設備が全滅し、全く同じことが起きている。その教訓に学べば、電気設備や非常用電源は屋上などの高所に設置しておくのが当然ではないか。
天災は自然が人間にもたらす試練である。だが、そこから学ぶことで被害を減らしてきたのが人間の歴史でもある。好例はオランダだ。国土の4分の1が海抜ゼロメートル以下のため、全長32kmの大堤防や浚渫した砂で海岸線を海面上昇と浸食から守る防波堤などを建設し、今ではその技術を世界中に輸出している。
日本も台風19号の「10.12」と21号の「10.25」を歴史の教訓とし、それを克服する仕組みや新しい技術を生み出すとともに、不動産売買などで土地の履歴を明示して価格や建築基準に反映すべきである。それを怠れば、再び甚大な被害を出すことになるだろう。
※週刊ポスト2019年11月29日号