さらにもうひとつ、おまけの原因を付け加えるならば、それは高いマンションでも買う人がいたということ。
特に都心の華やかな立地や湾岸エリアで供給されるタワーマンションは、値上がり期待での購入が目立っていた。自分が住むのではなく、建物が完成して引渡しを受ければ、すぐに売却するための購入である。不思議なことに、新築売り出し価格よりも15%程度高い物件にも、買い手が付いていたのだ。
このように、ここ数年の新築マンション市場では、需給と供給の関係からいっても健全な価格が形成されていないのだ。だから、新築マンションはどんどん高くなった。そしてとうとう売れなくなるまで価格が上がり、売れないから供給量も減った──。にもかかわらず、まだ値下がりは始まらない。
ではこの先、どうなるのか? 大きく景気が後退しなければ、今のように供給が細って、価格が高いままの状態がしばらく続くだろう。しかし、その間中古マンションは徐々に下がっていく。供給過剰だからだ。ここには需給関係での価格形成が見られる。
その結果、新築マンションは高値に取り残された“絶滅危惧種”になる。つまり、新築マンションの開発分譲というビジネスは、今のままでは存続が困難になってしまう。
そのうち、新築マンションは「新築」にこだわる一部の富裕層向けに細々と供給される程度にまで規模が縮小されるだろう。私はかねがねそういう状態を新築マンションの“フェラーリ化”と呼んできたが、すでにその兆候は表れている。