2番目の理由は、それでもマンションデベロッパーが高値で土地を買ってきたから。「高いから買わない」というのは、われわれ一般人の感覚である。たとえ土地が高くなっても、一定量は買わなければならないというのがマンションデベロッパーなのだ。なぜか。
マンションデベロッパーは、そのほとんどが上場企業である。上場企業は来期の経営計画を発表する。当然、売上目標も設定する。余程のことがない限り、「来期は減収減益です」なんて目標は定めることはできない。悪くても、売り上げは「今期並み」くらいにはしなければならない。売り上げを確保するには売るモノが必要。つまりは、事業用地=土地を買わなければならないのだ。そうしなければマンションは建たない。
だから、高いからと言って「何も買わない」という選択肢はない。目の前に並べられた土地の中から、少しでもマシな物件を買う。こういう理由から、高くなった土地でも買い手が付いてきたのだ。
3番目の理由は、マンションデベロッパーは新築マンションが必ずしも売れなくてよいと考えている現実がある。
リーマンショックの翌年、今から10年前の2009年にマンションデベロッパーがバタバタと倒産した。その時に潰れたのは、いわゆる「独立系専業」に区分される企業だ。どこの企業系列にも属さず、しかもマンションの開発分業を専業としていた会社のことである。社名にカタカナを使っているところが多かった。
そして残ったのは財閥系、ゼネコン系、金融系など、どこかの大手企業の系列である会社がほとんどだ。こういう会社はマンションの開発分譲事業が左前になっても倒産の危機には至らない。せいぜい事業縮小などでしのげる。
一部、経営体力のある独立系専業は生き残ったが、そういった会社は少々売れなくても無理な値引きに走らなくてもよい。だから、市場では値引き現象が目立たたず、それが市場の価格維持に貢献している。