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池上彰 1年に2度イギリスを訪れて見えた「EU離脱騒動疲れ」

ジョンソン首相が強行したいEU離脱に対し国民は辟易しているという(写真/AFP=時事)

 私は今年(2019年)、EU離脱を控えたイギリスに2度行ってきました。一回目は当初の離脱期限だった3月、そして二回目は3度目の離脱期限を延期した直後の11月です。

 3月のイギリスは、それはもう賑やかなものでした。離脱期限を間近に控え、難航する離脱交渉に新聞・テレビのマスコミ各社が連日、追い込まれたメイ首相(当時)を取り上げていました。市民レベルでは離脱反対派の「もう一度、国民投票をすべき!」という100万人のデモがあったり、賛成派が離脱カウントダウンをしたり、イギリス全体が騒然としていて、「その日」がいよいよ近くなったのだなということを実感しました。

 ところが11月に行った時には、一転してとても静か。新たに就任した離脱強硬派のジョンソン首相がなんとか総選挙実施に漕ぎ着けたので、それへ向けては幾分の盛り上がりを見せていました。政治家はそれが仕事ですから、離脱問題も熱心に語ります。ただし、イギリスの選挙運動は日本のような選挙カーに乗って大音響で候補者の名前を連呼するといったものではなく、政党や立候補者による戸別訪問が主なので、街の様子は普段と変わりません。

 一方、国民はというと、度重なる離脱延期に辟易しているというのが実状のようです。それを物語るのが、イギリスのTV局スカイニュースがこの10月に、ブレグジットの報道を一切取り上げない「スカイニュース ブレグジットフリー」というチャンネルを立ち上げたことです。なかなか結論の出ない事態にもううんざり、そんなニュース見たくないという国民が多いということなのでしょう。あるいは、この立ち上げにはイギリス人特有の皮肉も込められているのかもしれません。

 イギリスのEU離脱は、2016年6月の国民投票で決まりました。しかし、その結果に国民自体が驚いたという、なんとも取り返しのつかないものとなってしまいました。その後、EUと離脱について協議を重ねて合意案をつくってきたけれども、イギリス議会がそれを否決してしまいます。結局、当初の2019年3月29日の離脱期限に間に合わず。その後も延期を重ねて現在(2019年12月上旬)もまだゴタゴタが続いています。

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