ライフ

2019年の食を総括 タピオカ、オレンジワイン、コメ復権

タピオカ店には行列が絶えなかった

 美味いものを食う、それ以上に楽しいことはそうない。今年はどんな1年だっただろうか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が2019年を総括する。

 * * *
 2019年も食業界でさまざまなブームが起きたが、元号が令和となった今年の大賞はなんと言ってもタピオカに尽きる。「タピる」が流行語大賞トップ10に選ばれ、飲んだ後の空きカップのゴミ問題などを含め、1990年代の第一次、2000年代の第二次とは比較にならないほど盛り上がった。若者が行き交う町には、続々とタピオカミルクティーの店舗が出店し、狭小物件でも行列ができ、社会現象にまでなった。

 過去二回のブームと違ったのは、インスタグラムなどSNSなどでの個人発信が大きなうねりを生んだことで、関連用語が爆発的に増えたことだった。

 前出の「タピる」(タピオカを食べる)のほか、「タピ活」(タピオカに触れる活動)などの言葉も一般的に遣われた。さらに発祥店によるSNSへの写真投稿催事「タピオカチャレンジ」が、ユーザーによって独り歩き。一部ではタピオカミルクティーを胸に乗せて写真を撮影し、「#タピオカチャレンジ」というハッシュタグでSNS展開するユーザーも現れた。流行を個人個人がカスタマイズして、サブカルチャー文脈に乗せて楽しむしなやかさも印象的だった。

 局所的に使われる用語も増え、筆者が耳にした範囲では「タピられる」という言葉を「行列に割り込まれる」という意味で使う大学生もいた。極大化したブームは、ビジネス面、社会問題、そして若者文化まで多様な影響を与えながら、肌寒くなるとともに落ち着きを見せている。来年、暖かくなる頃に、果たしてどれだけの行列が復活するのか。無数に増殖したタピオカ店はブームの先に到達できるか、真価が問われるのは2020年である。

 一方、大人世代にとって一大ブームとなった飲料と言えば、「オレンジワイン」。「オレンジ」と言っても柑橘類を原料としているわけではない。もともとは一大産地ジョージア(グルジア)で「アンバーワイン」と言われていたワインを指す。

 白ワインに使われるような白ブドウ品種を使いながら、赤ワインのように果皮や種とともに発酵させたワインで、白の華やかさのなかに赤にも通じる渋味や苦味がニュアンスとして効いている。添加物の少ないワインが多かったこともあり、ナチュラルワインの流行とともに追い風に乗った。一般的な赤ワインや白ワインが苦手としてきた香辛料を使った料理との相性もよく、今年一年で扱う飲食店も一気に増えた。白、赤、ロゼという作りの体系で考えると、見落とされていた種類であり、こちらはブームでは終わらずカテゴリーとして確立されていくはずだ。

「復権」という側面から見ると、この数年「糖質制限」などの逆風にさらされてきたコメにも光が当たりつつある。近年、地球温暖化に伴い、各地で育てられてきた品種に高温障害が多発した。各地の農業試験場が新品種の開発に乗り出した結果、この数年でコメの新品種が一気に増加。甘みと粘りに特徴のあるコシヒカリの逆を行くような「ハリ」や「粒立ち」といった特徴のあるコメがデビューしたことで、一気にコメの多様化が進んだ。

関連記事

トピックス

谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン