名古屋市内には地下鉄のほかにもJR・名鉄・近鉄といった鉄道が運行されており、これらを利用して外出する高齢者は少なくない。しかし、これまでの敬老パスはJR・名鉄・近鉄を対象外にしていた。そのため、敬老パスが使われる地域と使われない地域との格差がはっきりし、それが不公平感としてくすぶっていた。制度を変更することで、JR・名鉄・近鉄などでも敬老パスが使用できるようになり、市民の間にあった不公平感は緩和される。
「名古屋市の敬老パスは、所得に応じて一人あたり年間1000円~5000円を負担していただいております。敬老パスの年間予算は約145億円ですが、JR・名鉄・近鉄が利用できるようになれば、事業予算が増えることは間違いありません。事業予算が膨れ上がることは好ましいことではありませんから、市では一人あたりの年間利用回数の上限を設けるなど、予算を増やさずに利便性を高めることを検討しています」(同)
近年、現役世代が負担する社会保障費は増え続けている。現役世代の窮状を考慮すれば、敬老パスなどの高齢者に対する優遇を改めてほしいという声が大きくなることは理解できる話だ。
しかし、近年は高齢者ドライバーが起こす事故が大きくクローズアップされるようになり、高齢者の間でも免許の自主返納を促す機運は高まっている。鉄道やバスに乗って出かけられる環境づくりは、自主返納を後押しすることにもなる。東京都豊島区で起きた事故は、若いママと幼児が犠牲になった。そうした悲惨な事故を減少させることにもつながることを思えば、敬老パスは現役世代にもメリットがあるといえる。
敬老パスの問題は、高齢者優遇という単純な話ではない。時代に即した制度設計が求められている。