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元ヤン47歳のプロパンガス販売店主が北関東の地元を離れる日

郊外で夜も明るいのはヤンキーたちも群がるコンビニかファミレス(イメージ)

郊外で夜も明るいのはヤンキーたちも群がるコンビニかファミレス(イメージ)

 大人になったら、お父さんと同じ○○屋になる。自営業の家の子どもなら、小学生くらいまでなら口にしたことがある将来の夢ではないだろうか。30~40代の就職氷河期世代からみると、個人商店であっても経営者の家の同級生はうらやましく見えているかもしれない。しかし、自営業の子どもたちも、親世代のようにうまくいかないと悩む人が多い。親世代と違ってうまくいかないことが多いとわだかまりを抱える彼らに対し、まだやり直せるという期待をこめて「しくじり世代」と名付けたのは、近著『ルポ 京アニを燃やした男』が話題の日野百草氏。今回は、元ヤンキーで父のプロパン屋を受け継いだ47歳男性が迎える人生の岐路についてレポートする。

 * * *
 北関東、国道沿いのファミレスで待ち合わせをすると、竹下竜二さん(仮名・47歳)が入ってきた。スラリとした長身でなかなかのイケメンであるが、上下のスウェットは色あせて毛玉が浮いている。彼は祖父の代からのプロパン屋で、差し出された名刺には「有限会社竹中燃料代表取締役」とあった。

「親にだまされた。こんな目にあうならプロパン屋なんて継がなかった」

 竹下さんは地元でも有名なヤンキー工業高校を1991年に卒業後、親の紹介でガソリンスタンドを経営する地元販売店に就職した。

「車が好きなんだ。最初に勤めた会社はスタンドだったけど簡単な修理とかもしてて、俺も手伝ってた」

 あとで見せてもらったが、なかなか気合いの入った中古のセルシオだった。維持費も保険もバカにならないだろう。

 竹下さんは中学、高校とやんちゃだったそうだ。十代のころは警察の世話にもなっている。バイク泥棒や対立するグループとの衝突による暴行など。

「あん時は高卒の就職なんて余裕だった。俺はコネでスタンドに正社員で入れてもらえたけど、あの時代、俺のバカ高校でも素行のいい奴は大手の工場とかに入れた。もっともヤンキーの親は自営業が多いんで、そのまま親の手伝いが自然だね」

 団塊ジュニアでも1971年、1972年生まれは高卒ならバブル期だった。悲惨なのは大学に進学してしまった層であり、彼らは卒業時にバブルが弾けることになる。全員が就職氷河期のポスト団塊ジュニアと違い、個々の団塊ジュニアに氷河期に関する感覚の齟齬があるのはこのせいである。

「学生時代も勤めてからも、30代までは最高に楽しかったよ」

 竹下さんはこの通りのルックスなのでモテたそうだ。常に女の子はとっかえひっかえ、社会人になってからも地元の学生とヤリまくった。

「ちょっとワルぶって車コロがして、背が高くてイケメンならいくらでも女は引っかかる。ヤンキードラマ観たりヤンキー漫画読んで勉強したよ」

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