昨年9月に開かれた国際原子力機関(IAEA)の年次総会で、韓国の代表は福島第1原発の処理水を海洋放出することに対し、「世界全体の海洋環境に影響を及ぼしうる重大な国際問題となる」と訴えた。さらに、韓国与党の共に民主党も、昨年9月に「日本の放射能汚染地図」なるものを作成。五輪の競技場や聖火スタート地点などの放射線量の数値を公開したが、日本の市民団体の測定データをもとにしたと言いながら、実際とは異なる数値を並べていた。
そうした韓国側のネガティブキャンペーンに、日本側も黙っているわけではない。
先の日韓首脳会談でも安倍首相はこの問題に触れ、東京五輪に向けて両国政府が交流していくのが重要としながら、文大統領に対し、「福島第1原発から排出されている水に含まれる放射性物質の量は韓国の原発の排水の100分の1以下だ」と指摘したという(産経新聞12月28日付)。
また日本の外務省は、韓国の国民の誤解を解くため、在韓国日本大使館ホームページに「日本と韓国の空間線量率」を掲載。「福島市」「いわき市」「東京」「ソウル」の放射線量データを毎日更新し公開している。それによると、福島市とソウルの環境中の放射線量は概ね同程度だ。
「日本側が示しているデータを一切無視し、“放射能五輪”のレッテルを貼る韓国側の行為は、もはや嫌がらせのレベル。当たり前のことですが、こうした行為で韓国に対する日本の国民感情が良くなるわけがありません」(前川氏)
五輪期間中にもこうした“嫌がらせ”が続くようなら、日本の一部にある嫌韓感情がさらに高まるのは避けられない。ゆえに前川氏は、2020年は転換点になると見る。
「韓国とはわかり合えない、韓国は距離を置いた方がいい国だと気づく人が増えるでしょう。私も韓国とは、しばらく冷却期間を設けて離れているほうがいいと思います。
近世以降、日韓関係が平穏だったのは江戸時代くらいで、両者とも鎖国をしていて朝鮮通信使のほかはほとんど交流がなかった時代です。白村江の戦いの時代からずっと、深く関わったときは必ず軋轢を生んでいる。だから、近くて遠い国として、新しい“冷えた関係”を構築すべきと考えます」(前川氏)
●取材・文/清水典之(フリーライター)