『Mother』『Woman』(日本テレビ系)、『最高の離婚』(フジテレビ系)、『カルテット』(TBS系)などを手がけた坂元裕二さんは8クール、『リーガルハイ』『デート~恋とはどんなものかしら~』(フジテレビ系)、『鈴木先生』(テレビ東京系)などを手がけた古沢良太さんは7クール、『ロングバケーション』(フジテレビ系)、『ビューティフルライフ』『オレンジデイズ』(TBS系)、『半分、青い。』(NHK)などを手がけた北川悦吏子さんは6クール、『SP 警視庁警備部警護課第四係』(フジテレビ系)、『BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係』『dele』(テレビ朝日系)、『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)などを手がけた金城一紀さんも6クール、テレビの連ドラから遠ざかっています。

 視聴者と業界人の両方に多くのファンを持つ人気脚本家たちは、なぜゴールデン・プライム帯はおろか、テレビの連ドラから距離を置いているのでしょうか。

◆視聴率、表現の制約、質をめぐる思惑

 録画機器の発達とネット視聴の浸透によって、ドラマはリアルタイムでテレビ視聴してもらうことが難しくなりました。しかし、ゴールデン・プライム帯は現在でもリアルタイムでテレビ視聴してもらい、視聴率獲得することが最重要視され、そのためのドラマが企画・制作されています。

 だから冒頭に挙げたように、見やすさを重視した一話完結型の医療モノや刑事モノが増えました。また、企画を通すためには、「視聴率が獲得できるか?」という基準をクリアしなければいけないため、もともとファンの多い人気原作の実写化が選ばれがちです。

 しかし、基本的に人気脚本家たちが書きたいのはオリジナルであり、しかもその大半は医療や刑事ではありません。実際、前述した『コタキ兄弟と四苦八苦』、『だから私は推しました』、『セミオトコ』、『時効警察はじめました』、『百合だのかんだの』はオリジナルであり、作品ジャンルも世界観もバラバラです。

 ゆえにドラマのプロデューサーたちは、視聴率獲得が絶対視されるゴールデン・プライム帯の作品に人気脚本家を起用しづらいところがあり、「深夜帯に伸び伸びと書いてもらおう」という形が増えているのです。

 人気脚本家たちにとっても、深夜帯なら低視聴率報道に悩まされることも、「脚本がひどい」などのバッシングを受けることも少なく、表現の制約もゴールデン・プライム帯ほど多くありません。自分の書きたいものや、質の高さを追求することに専念できるため、「むしろ深夜帯のほうがいい」という人が増えました。

 また、それでも不自由さを感じてしまう脚本家は、「テレビの連ドラから少し距離を取り、単発ドラマ、映画、舞台などを手がけながら様子を見ている」ようなのです。

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