すでに1人1台を実現した渋谷区教育委員会の場合で検証してみよう。全小中学生に加え、教員分も含め8900台を2017、2018、2019年度と3か年で整備し、調達はリース契約によるものだった。
各年度の調達契約は3年リースで、リース料総額24億7200万円。この「合計額」を「端末数」で割って単価を計算すると、1台あたり実に27万8000円になる。
家電量販店でもノートPCで1台27万円はほとんどお目にかかれない高性能品に相当する。プロゲーマー向けの高速処理が可能なデスクトップPCが買える金額だ。しかし、区教委がリースしたのは富士通の「アローズタブ」。2017年当時に新聞に掲載された同じシリーズの商品の小売希望価格(8万5300円)からしても3倍以上、文科省の報告書が示した目安からすると6倍にもなる。
渋谷区だけではない。2015年から3か年にわたって8500台を5年リースの契約で調達した東京都(196校の都立高校等)でも、端末1台あたりのリース料総額は25万円だ。
市販品に比べ割高である点を渋谷区の担当者に訊くと、「端末代だけではなく、保管ラックも必要だし、初期設定を含めた保守の費用、無線LANの設置費用も含まれる」という。
区教委も都教育庁もいくらの端末代を前提に契約したのかを明らかにしなかった。回答に共通するのは機器の故障に対応する保守要員の人件費が加わっていることだ。結果、端末代が適正かどうかは見えにくくなる。
◆授業中に「いきなりフリーズ」
加えて、端末が揃っても使う知恵がなければ宝の持ち腐れだ。端末導入で先行する自治体に助言するICT支援員はいう。
「従来型の学校のやり方なら、40人の学級で一斉に〈パソコンを立ち上げて〉〈このサイトをクリック〉とやらせてしまいがち。当然、ネットワークに負荷がかかって最悪フリーズです。不具合で動かない端末が1台あるだけで、授業の進行が止まることはよくある」